「聖地巡礼」でインバウンド需要を加速させる!参考にすべき3つの事例と自治体側に必要な姿勢

現在、日本ではインバウンド旋風が巻き起こり、多くの外国人観光客が訪れています。様々な自治体が外国人観光客を誘致するために地域の観光資源を掘り起こし、盛り上がりっている様子を海外に発信するなどしています。

 観光資源といっても、その種類は地域によって様々です。なかでも人気を博しているのが、漫画やアニメの舞台となった地域をファンが訪れる「聖地巡礼」と呼ばれるものです。

 人気アニメなどに出てくる「街」や「場所」はファンの間で「聖地」と呼ばれていて、その場所を訪れる観光客が急増しています。世界でも名の知れた日本の漫画やアニメを活用した、地方のインバウンド誘致や活性化が、いま全国で注目を集めているのです。

 その「聖地巡礼」で人気となっている地域がどのような施策を行い人気を博しているのか、3つの地域の成功事例を見ていきたいと思います。

【らき☆すた】埼玉県久喜市のファンを巻き込んだ取り組み

 「聖地巡礼」というワードが登場し、地方創生に活かされる大きなきっかけとなったのが、この「らき☆すた」というアニメだと言われています。女子高校生の日常を描いた物語で、その舞台となったのが埼玉県の鷲宮町(現 久喜市鷲宮)。そこは宿泊施設の数も少なく観光とは程遠い街でした。

 「らき☆すた」は2007年の4月から放映がはじまったアニメで、同年5月頃から鷲宮町を訪れる若者の姿が目立ち始め、8月にはすでに「聖地」として賑わいを見せていたようです。このアニメの影響で鷺宮神社の初詣の来客数が7万人から47万人に増加したといいます。

 ことの発端としてはアニメ視聴者の自発的な観光でしたが、地元商工会などがこの動きに目をつけ『らき☆すた』のキャラクターが描かれた絵馬型携帯ストラップを販売するイベントを行いました。町内17の店舗で販売を行いましたが、開店から30分も経たずに完売。その後、扱う店舗数を増やし最終的にはこれまで3万5,000個、計2億2,000万円以上を売り上げる大ヒットとなったようです。

 2008年4月には、旧鷲宮町が登場人物である「柊一家」を特別に住民登録。そのイベントに際して1枚300円で「特別住民票」をファンに交付しました。その初日には全国から2,760人ものファンが訪れたそうです。 

 その後も「らき☆すた」の様々なイベントが地域や企業を巻き込んで行われるようになりました。そうしていくうちに何名かの熱心なファンが企画のアイデアを練るためにボランティアで協力してくれるようになったといいます。このようなボランティアスタッフは、常時5、6人が商工会の会議などに加わっていて、イベント時になどでは15人ほどのスタッフが手助けをしてくれるそうです。

 こうしたボランティアスタッフがパイプ役となり、商工会はファンのニーズを的確に汲み取れるようになり、イベントやグッズに活かし、人材不足も補うことができました。そしてなによりファンとの交流が生まれるようになったことで、息の長い観光客誘致に繋がっている地域おこしの好事例だといえます。

久喜市観光協会:http://kuki.jpn.org/main/kankoukyoukai/washinomiya/index.html

【ガールズ&パンツァー】茨城県東茨城郡大洗町の継続性とふるさと納税

 茨城県の大洗はかつて大きな海水浴場で賑わった街でしたが、東日本大震災などの影響により、徐々に観光客が減少していました。そうした街を再び賑わせたのが「ガールズ&パンツァー」というアニメ。

 このアニメは「ガルパン」という呼称で人気を博しています。ガルパンの舞台の一部が大洗町に設定されていて、大洗町の町並みが忠実に描写されています。

 地元の「大洗あんこう祭り」に出演声優を招待し、トークショーや関連グッズの販売などが行われました。これまでは来場者数が3万5,000人程度であったところ、その年は6万人程度の来場があったといいます。

 アニメの場所の設定も細かく、大洗町の主要なスポットをくまなく取り上げているのも特徴で「戦車が激突した旅館」や、「戦車が撃破された場所」といった地点を地図に記し、場所が分かるようにして、巡礼を促しています。商店街も協力し、店先に登場人物の等身大パネルや戦車のパネルを設置。商店の中では、キャラクターのイメージに合った商品やサービスを展開しています。

 単発でイベントを終わらせず、継続的に企画を行っておりその地域も拡大しています。例えば、茨城空港がある小美玉市にも波及し、同市出身という設定のキャラクターの山郷あゆみを活用し「ガルパン応援計画」というキャンペーンなども行われています。

 2016年12月には、1カ月間でふるさと納税として1億6000万円以上の寄付金が寄せられたと発表しています。それまでは地元の特産品や海産物などを返礼品として送っていて、その前年度の寄付金の総額は約763万円、申し込み件数は202件にとどまっていました。

 しかし、ガルパンのグッズを230品目ほど新たに返礼品に加えることで、同市のふるさと納税は一気に人気に火がつき1億6000万円以上の寄付金を集めることに成功しました。

ふるさとチョイス:https://www.furusato-tax.jp/product/detail/08309/687108

【ユーリ!!! on ICE】佐賀県唐津市の交通の不便さの解消とスマートフォンを活用した事例

 こちらはフィギュアスケートが題材のテレビアニメです。佐賀県の唐津駅、唐津の商店街、鏡山温泉などが舞台になっています。2016年の末に放送された比較的新しい作品ですが、観光客誘致に貢献した映像作品と舞台になった地域に贈られる「第8回ロケーションジャパン大賞」の特別賞を受賞するなど、すでに実績も十分です。

 ツアーなども多く組まれており、唐津の聖地を巡るタクシーを均一料金にするなど交通の便の悪さも解消されています。唐津市だけでなく東京でも明治神宮外苑アイススケート場などで佐賀県のおもてなし企画を行うなど、幅広く施策を展開しています。

 最近公開されたアニメだけあって、スマートフォンとの相性の良さも考慮された施策が行われています。twitterのハッシュタグを連動させるなどの企画も人気で、聖地巡礼用のアプリなどもリリースされています。

 SNSでの拡散能力の高さはもちろんですが、イベントとスマートフォンを連動させることで特典をデジタル形式で提供できたり、GPS機能や地図機能で効率的に案内することが可能になっています。

九観どっとねっと:http://www.kyu-kan.net/seichi/yuri_on_ice.html

作品を理解し、熱量をもってファンを巻き込んでいく姿勢を示す

 大ヒット映画「君の名は」の岐阜県・飛騨高山や、「スラムダンク」のオープニングに登場する鎌倉など、有名なアニメの聖地は他にもたくさんあります。イベントや企画も乱立している状態といえるでしょう。

 そうした中で、聖地巡礼によってファンをしっかりと誘致していくためには、もはや中途半端な施策では訪れてもらえません。

 聖地巡礼と一口でいっても、テーマやジャンルはさまざまで、アニメだけでなく、映画やドラマ、小説など原作の種類も様々で、絵のタッチや物語の切り口も作品によってそれぞれ違います。作品それぞれに振り幅が存在することによって老若男女・国内外を問わず支持を得られているということを理解しなければならないでしょう。

 各コンテンツが持っているファンの層や、作品の性質によってファンが求めるものは変わってきます。また、地域との連携も欠かせません。地域によっては人手不足も深刻でしょう。

 「らき☆すた」のファンを巻き込む事例などは、これらの要素を一気に解決してくれます。しかし、そう都合よくファンが手伝ってはくれるわけではないので、まずは自治体が熱量を持ってその作品を理解し、盛り上げていこうとする姿勢を示すことが重要です。

 その地域に潜在的な需要があったとしても、保守的な地域であったり地元の権力者が乗り気でない、などといった理由によって新たな取り組みが行われなかったりもします。まずは小さな成功事例を積み上げていき、数字で説得していくことも大切になってくるのではないでしょうか。

 多くの訪日外国人観光客は、漫画・アニメなどが絡んだ新しいかたちの観光に対して大きな関心を持っています。「聖地巡礼」を介したインバウンド誘致にはこれからも大きな可能性があるといえます。観光客・自治体・作品のそれぞれが三方良しとなり、熱い情熱が注げるような施策がいま求められています。

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