『モノ消費からコト消費へ』は本当?訪日外国人の目的別消費額の比較から見るインバウンド効果

今、日本人の消費の目的が変わってきています。

普段私たちが生活をする上で商品やサービスを購入する消費活動は、「モノ消費」と呼ばれます。高度成長期で言えば、ほとんどの日本人の夢は一戸建ての家を買うこと、車を所有すること、大型家電を買い揃えること。これが一種のステータスとなっていました。典型的なモノ消費型ライフです。

一方で現代の消費はモノ消費よりも体験することを重視した「コト消費」が増えてきています。コト消費の例としては、旅行や文化体験といった体験にスポットを当てた消費活動のことです。

今回は日本人のコト消費とモノ消費に関する意識の変化と、コト消費はこれからどうなっていくか、またコト消費・モノ消費とインバウンドとの関連性について外国人旅行客の消費額と目的別消費額を比べながら述べていきたいと思います。

目次

  • なぜモノ消費からコト消費にシフトしているのか
  • コト消費はこれから伸びていくのか
  • コト消費20の事例集
  • 訪日外国人によるインバウンドはコト消費?モノ消費?
  • まとめ

●日本人の意識の変化:モノ消費からコト消費へ

モノ消費からコト消費にシフトしている理由としては、ある程度モノが行き渡ったためと考えられます。

以下、日本の消費者の意識の変化についてグラフで表したものを見ていきたいと思います。

graph_1

(出典:内閣府 「国民生活に関する世論調査」を加工)
http://survey.gov-online.go.jp/h28/h28-life/gairyaku.pdf

こちらは内閣府が発表した世論調査です。横軸が調査年月で昭和47年~平成28年までのデータです。生活における「モノの豊かさ」と「心の豊かさ」についての重要度を割合として表しています。

グラフで見てわかる通り、物の豊かさを求める割合は下がり続けているにも関わらず、心の豊かさを求める割合はどんどん伸びています。

さらに、こちらは2016年の調査ですが、図1では「多くの物を所有することは幸せだ」と考えている人は「非常にそう思う」「ややそう思う」という人は全体で37.2%。

「あまりそう思わない」「全くそう思わない」という人は62.8%という結果になっています。

graph_2

一方で図2では「物を所有するより、得られる体験にお金をかけたい」と考えている人が「非常にそう思う」「ややそう思う」という人で69%という高い数値を示しています。物がない時代には、これを買ったら次はあれが欲しい、その次は、というようにモノ消費に意識が傾きがちな社会でした。しかし、いわゆる白物家電が揃っていることが当たり前になり、パソコンが一家に1台から1人に1台(あるいは複数台)になってから、モノ消費の傾向は落ち着き、コト消費にお金と意識がかけられるようになったのでしょう。

graph_3

(図1,図2の出典:PGF生命 「シェアリング・エコノミーと所有に関する意識調査 2016」)http://www.pgf-life.co.jp/is/news/NB300.do?NID=1346

●コト消費はこれから伸びていくのか

日本国内で言えば、コト消費はまだ伸びていくものと予測されます。
しかし、日本国内の少子高齢化に伴いモノ消費もコト消費も爆発的な伸びというものは生まれづらいと言えるでしょう。

以下のグラフで見ると、15~65歳の生産年齢人口が下がっていっている傾向であるのに対して、65歳以上の高齢化率は増加傾向であり、2055年では高齢化率が40%という世界でもかつて例のない超高齢社会になると予測されています。

graph_4

(出典:厚生労働省資料
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/dl/07.pdf#search=’日本+人口推移’)

消費活動を活発にする15~65歳の労働人口が少なくなってくると、それだけ経済活動も縮小していきます。近年の若者は裕福だった時代を知らない世代が増え、賃金の上昇も見込めないことから買い控えをする傾向が見られます。大きな消費を行うことは少なくなっており、わかりやすい例では若者の車離れが挙げられます。若者はスマホを駆使してフリマやシェアリングサービスを利用することでそれほど大きな消費を行なわず、身の丈に合った消費活動をしていると言えます。つまり、モノ消費よりもコト消費を重視する傾向にはあるが、どちらも活発的な消費ではなく、お金を使うこと自体に消極的な傾向があるということです。
このような背景があるため、国内だけで物の消費を促すには限界があります。

(参考:ロイター通信 焦点:消費低迷の裏に団塊高齢化、ミレニアル世代の消費構造も大幅変化)
http://jp.reuters.com/article/consumer-idJPKCN1200DM?pageNumber=1

そこで今注目されているのが外国人訪日客の存在です。外国人を相手にサービスを提供することで消費活動を活発にすることができます。

●コト消費20の事例集

コト消費には、宿泊する、アクティビティを体験するといった純粋な体験型コト消費だけでなく、居心地のよい空間を提供して商品の購入をうながす時間消費型コト消費(トキ消費)、商品や食からさらに広がりをもたせるライフスタイル型、あるいはストーリー型コト消費など、様々なタイプがあります。2018年にはどのようなコト消費が登場したのでしょうか。

様々なタイプのコト消費の事例についてチェックしてみましょう。

・ジャパネットクルーズ

通信販売の株式会社ジャパネットホールディングスは、パナマの客船MSCスプレンディダによる全船貸切クルーズ旅行「ジャパネットクルーズ」を販売しています。10日間で日本一周するこのツアーは、寄港地での無料シャトルバス運行や、ジャパネット独自の船内イベントなど全船貸切のメリットを活かした特別プランをセールスポイントにしています。一部有料のサービスもあるので、滞在中にモノ消費を促すことができるプランといえます。

・ジャパネットクルーズ
https://www.japanet.co.jp/shopping/cruising/index.html

・ケイウノ

ジュエリーブランドのケイウノでは、自分の手で作るペアリング、婚約指輪、結婚指輪のサービスを提供しています。コンシェルジュやデザイナーのサポートによって、本格的なリングをハンドメイドできるこのサービスは、指輪制作自体を共同作業として楽しめるのが特徴です。料金体系は、基本料金+金属代金+オプション代金(宝石やデザイン加工など)と細かく設定されているので、デザインに自由度が高いのもポイント。最もシンプルな甲丸リングなら、K18素材で79,000円(ペア)~と比較的リーズナブルに制作できます。

・ケイウノYOURSELF
https://www.k-uno.co.jp/diy/

・Makers-base

株式会社Makers’による「Makers-bas(メイカーズ・ベース)」は、様々な機器を使ったワークショップを提供する会員制の工房です。東京都目黒区と、千葉県の千葉そごうジュンヌ館3F、どちらもレーザーカッターや電動ろくろなど100種類以上の専用機器や道具を使って本格的なものづくりを体験できます。
ワークショップのほか、欲しいものを依頼するカスタマイズやオーダーも可能です。ワークショップはコト消費の代表格ですが、リングやバングルといった金工、箸やボウル、スツールを作る木工製作、陶芸、テキスタイル、デジタル加工など幅広いものづくりに対応しているのがメイカーズベースの特徴です。

・Makers-base
http://makers-base.com/

・イオン「THE OUTLETS」

まる一日滞在して遊べるモールをコンセプトにした「THE OUTLETS(ジ・アウトレット)」は、アウトレットモールにシネコンやスケートリンクといった娯楽施設をプラスした新型ショッピングセンターです。1号店は200店が出店する「ジ・アウトレット広島」で、地元店舗のほかに中国・四国初出店となる店舗が96店、テナントになりました。
イオンは、「ジ・アウトレット」の地元民だけでなくインバウンドも含めた観光客もターゲットとしています。スケートリンク「ワンダーリンク」や、ボウリング、スポーツ、カラオケ、ゲームなどが楽しめるアミューズメント施設「アミューズメント&スポーツ・カプコン」といった併設施設を充実させ、これまでアウトレットモールになかったエンタメ性の強化をはかっています。
エンタメ施設と合わせて来場者数が増えることで、モノ消費も増加するのではないかという狙いがあります。

・THE OUTLETS HIROSHIMA
http://the-outlets-hiroshima.com/

・高島屋横浜店「ベルサンパティック」

高島屋横浜店の「ベルサンパティック」は、眉カットやヘアケアといったビューティケアを受けられる体感型の売り場です。70種類の施術を100~1万5,000円で受けることができ、気に入った商品は購入することもできます。こうしたケア体験(コト消費)によって美容やメイクアップアイテムについての知識向上をはかってモノ消費につなげるのが目標で、2018年秋には日本橋店でも同様のサービスを実施する予定です。

・ベルサンパティック
https://www.takashimaya.co.jp/yokohama/event/bellesympathique/

・東武百貨店池袋店「いけとうきっず」

東武百貨店池袋店は、東京都の「子育て応援とうきょうパスポート」に協賛しています。このパスポートは、都内の子育て世帯および妊娠中の女性が活用できるパスポートです。協賛店は粉ミルクのお湯を提供したり商品の割引サービスを実施するなど、子育て世帯に向けたサポートをおこなっています。「いけとうきっず」ではダンボール遊園地やキッズガーデン、NHKキャラクターと触れ合えるスペースなど、幼児向けのサービスを展開しています。メイクサービス「ベルサンパティック」と同様、百貨店の体験型コト消費といえます。

・いけとうきっず
http://www.tobu-dept.jp/ikebukuro/tnb/info/kids/

・大館市「秋田犬ツーリズム」

インバウンドを見据えたコト消費といえるのが、平成28年からスタートした「秋田犬ツーリズム」。これは秋田県大館市、北秋田市、小坂町が共同でおこなっている地域連携DMOです。DMO(Destination Management Organization/デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)とは、地域と共同で観光地域づくりをおこなう、観光資源に精通した法人をさします。秋田犬ツーリズムでは、「秋田犬ふれあい体験」、「本場大館きりたんぽづくり」、「着物で名所あるき」など様々なコト消費を発信しています。秋田を訪れたいと思う魅力を発信することで、観光地でのモノ消費を促すプロモーションとしても機能しています。

・秋田犬ツーリズム
http://www.city.odate.akita.jp/dcity/kankou/29-7944.html

・ニッカウヰスキー「余市蒸留所見学ツアー」

国の登録有形文化財に登録された建造物を見学し、ウヰスキーの試飲ができるツアーです。平成14年度緑化優良工場としても表彰され、自然と調和した工場見学として国内外から注目を集めています。ちなみにこのツアーは利用者からの高い評価を一貫して獲得していることから、旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」からエクセレンス認証(Certificate of Excellence)を授与されています。

・ニッカウヰスキー
https://www.nikka.com/distilleries/yoichi/

・なんば戎橋筋商店街「体験博2018」

大阪ミナミの中央に約100店の商店が並ぶなんば戎橋筋(えびすばしすじ)商店街は、2010年から年に2回、「体験博」と銘打ったイベントを開催しています。2018年の体験博では、商人が各店舗の技をレクチャーしたり、ミナミゆかりの人物を講師に招いて歌舞伎講座を開くなど様々なプログラムを開催しました。日本人観光客、訪日外国人どちらも楽しめるイベントといえます。

・「体験博2018」
http://www.ebisubashi.or.jp/taiken/

・暗闇フィットネス「FEELCYCLE」

暗闇の中で運動するという非日常体験が多くの支持を集めている暗闇フィットネス。暗闇フィットネスの生みの親である「FEELCYCLE」は、45分間、暗闇でフィットネスバイクを漕ぎ続けるレッスンをおこなっています。大音量で音楽を流しながら暗闇でバイクを漕ぐレッスンは、従来のジムとは異なるおしゃれな空間作りがコト消費としての特徴といえるでしょう。モノ消費とセットになっている百貨店や商店街とは異なり、レッスンやワークショップはコト消費に限定された消費になります。

・FEELCYCLE
https://www.feelcycle.com/

・東京スカイツリー「視界不良時限定サービス」

天候が良くない時にしか体験できない特別感のあるコト消費が、東京スカイツリーのVR体験です。スカイツリー展望デッキのフロア350に設置された簡易ヘッドマウントディスプレイを装着して、「スカイツリーのガラス清掃」、「スカイツリー展望回廊からみる1日」を疑似体験できます。視界不良時にしか設置されないため、通常のコト消費よりもプレミア感があります。展望を売りにする施設でも、視界不良時に訪れる魅力を打ち出すことによって、来場者数を増やしモノ消費の増加をも期待できます。

・東京スカイツリー「視界不良時限定サービス」
http://www.tokyo-skytree.jp/enjoy/vr/

・「ジュンク堂書店でコスプレしてみませんか?2018」

読書家の憧れである「書店で1泊」をさらに拡大化した企画が、2018年6月に1泊2日で開催された書店でのコスプレイベントです。立川高島屋のジュンク堂書店で開催されました。抽選に当選したコスプレイヤーとカメラマンは会費を払って、店内に宿泊しコスプレと撮影を楽しめます。

・MARUZEN&JUNKUDO
https://www.maruzenjunkudo.co.jp/info/20180301-01/

・東京ミートレア

イートインとテイクアウト専門店で構成された東京都八王子市南大沢の「東京ミートレア」は、肉料理に特化したフードミュージアムです。全国の肉料理が一堂に会した会場は、各店舗の厨房を見えるようにしたり、肉の豆知識を学べるコーナーがあったりと、食事以上の体験を提供するテーマパーク型コト消費施設になっています。

・東京ミートレア
http://www.tokyo-meatrea.com/info/

・東京ハーヴェスト

東京ハーヴェストは、虎ノ門ヒルズと新虎通りを会場としておこなわれる収穫祭をコンセプトとしたイベントです。「農家、漁師、酪農家といった食の作り手に感謝を伝える」をキーワードに、芸術やスポーツのイベントがおこなわれます。
2017年には、英語でのクッキングレッスン、米食ダイエット講座、食育を意識した田植え競争などがおこなわれました。サイトでは同じ内容を日本語と英語で表記するなど、インバウンドを意識した情報発信がなされています。

・東京ハーヴェスト2018
http://www.tokyoharvest.com/

・九州周遊観光「車泊」

「車泊(くるまはく)」は、総務省の「IoTサービス早出支援事業」のモデル事業です。コンセントから電気が使える車泊スペースに駐車し車中泊することで、家電調理器を使った調理ができるのが特徴です。また、近隣には24時間トイレが使える施設があったり温泉施設があったりと、キャンプとはひと味違う宿泊体験をセールスポイントにしています。

・九州周遊観光ポータル「車泊」
https://kurumahaku.jp/pages/about/

・ニューオータニ「ナイトプール」

インスタ映えすると話題になったナイトプールは、猛暑のせいもあり夏のナイトスポットとして定着した感があります。都内唯一のガーデンプールを有するホテルニューオータニは、DJイベントやレディースナイトも開催しています。
滞在中何度でもプールに入場できるパス付きの宿泊プランや、ナイトプール入場券と宿泊を合わせたプランといったイベント+宿泊のコト消費も取り扱っています。

・ニューオータニ「GARDEN POOL」
https://www.newotani.co.jp/group/pools/tokyo/

・原宿カワイイツアー

訪日外国人向けの観光案内「原宿カワイイツアー」は、研修を受けたロリータファッション愛好家ガイドが原宿の様々な「kawaii」を案内する企画です。「kawaii」カフェや裏原宿、表参道といったエリアを散策するスタンダードツアーのほか、ツアー客の希望に合わせてスポットを巡るプライベートツアーも用意されています。
企画したのはIT関連事業をおこなう株式会社ブルーインパクトで、英語と日本語の2カ国語による催行となっています。英語のガイドツアーによって、訪日観光客が入りにくいような小規模店舗にも観光客が訪れるようになり、モノ消費も促されることが期待されます。

・原宿kawaiiツアー
http://harajuku-kawaii-tour.com/index_ja.html

・ロボットレストラン

東京都新宿区歌舞伎町のレストラン・バー、ロボットレストランは、大音響のロボットショーが話題となり、日本人よりも訪日観光客に人気のスポットとなっています。食事そのものよりも、派手な演出やポップなショーを楽しむという点において、コト消費の典型といえるかもしれません。ハリウッドを代表する映画監督の一人であるティム・バートンやポップシンガーのケイティ・ペリーらが来店したことでも知名度が上がり、有名になりました。

・ロボットレストラン
http://www.shinjuku-robot.com/pc/index.php?lng=ja

・忍者体験「忍者堂」

サムライと同様に世界に通じる日本のアイコン、「NINJA」に特化したコト消費施設「忍者堂」は、大阪の新今宮にある忍者体験屋敷です。この施設を手がけたハイ・パートナーズは、2013年から関西を中心に忍者体験観光事業を展開させてきました。「忍者堂」では、忍者装束のまま新世界やあべのハルカスといった近隣の観光施設に行ったり、団体向けに出張忍者ショーをおこなったりしています。

・忍者堂
http://ninjado.jp/

・株式会社オーエス「HENSHINメニュー」

ホットペッパービューティがアジア圏の女性を対象に実施したアンケートによると、日本のヘアサロンやネイルサロンは清潔感があり、イメージ通りの仕上がりが期待できるとして人気が高いそうです。少し古いデータですが、2014年に同じくホットペッパービューティがアジア圏の女性を対象におこなったアンケートでは、「訪日旅行中に体験してみたいこと」の7位に「美容サロンへ行く」がランクインしました。
こうしたニーズを受けて、2018年2月に中国向けの広告プロモーションをおこなう株式会社オーエスがスタートさせたのが「HENSHINメニュー」です。「HENSHINメニュー」は、訪日中国人観光客向けの美容体験ツアー。訪日中国人観光客は、国内の加盟サロンによるヘッドスパやメイク、ヘアアレンジなどを体験できます。

・Beauty Park HENSHIN
https://www.beauty-park.cn/henshin-hair/

●コト消費ビジネスモデルとは

近年のコト消費ビジネスモデルは、

1. 純粋体験型コト消費
2. イベント型コト消費
3. アトラクション施設型コト消費
4. 時間滞在型コト消費(+モノ消費)
5. コミュニティ型コト消費
6. ライフスタイル型コト消費(+モノ消費)
7. 買い物ワクワク型コト消費(+モノ消費)

の7つのタイプに分類されるといわれています。しかし、これらのうち時間滞在型コト消費やライフスタイル型コト消費、買い物ワクワク型コト消費は、購買体験というモノ消費と分かち難く結びついています。そのため、コト消費ビジネスモデルについては、コト消費、モノ消費の両サイドから見たプロモーションが必要といえるかもしれません。

●訪日外国人によるインバウンドはコト消費?モノ消費?

訪日外国人のモノ消費の代名詞である「爆買い」で有名になった中国人の訪日旅行は落ち着いたように見えますが、旅行客の多さは健在です。昔と多少異なるのが、買い物袋や家電が入ったダンボールを抱えた爆買いを行っている訪日旅行客、つまりモノ消費に特化した旅行客を以前より見かける機会が減った点です。中国人が爆買いをしなくなった理由としては元安の問題があります。また越境ECという新たな市場の台頭により、わざわざ現地に出向いて買い物をする必要性が薄れ、ネット環境があれば国外での買い物が済んでしまうことも挙げられます。モノ消費だけのために日本を訪れる観光客という図式は、過去のものになったのです。

現在は、外国人訪日客に人気とされているのはコト消費であると様々なメディアで取り上げられています。コト消費ビジネスモデルのポピュラーなものでは、日本の文化体験や、着物体験、日本の美食ツアーといったものが挙げられます。ほかにスキー、温泉といった体験型のサービスに対して魅力を感じている人が多くなったと報じられていますが、果たして外国人旅行客の消費の目的は本当にモノ消費からコト消費へシフトしているのでしょうか?

以下では訪日外国人の旅行消費額について見た後に、目的別消費額を見ていきたいと思います。
観光庁の報告書によると、訪日外国人の旅行消費額は以下の通りとなっています。

○ 平成28年の訪日外国人旅行消費額(確報)は3兆7,476億円、 前年(3兆4,771億円)に比べ7.8%増。

(出典:観光庁 訪日外国人動向調査 プレスリリース/調査結果の発表 2017年3月31日)
http://www.mlit.go.jp/common/001179539.pdf

また、2016年には訪日旅行客が過去最高の2,000万人超を記録し、旅行客の増加に伴いコト消費、モノ消費を合わせた消費額も順調に増加しています。近年ではこうした旅行客増加と旅行客による消費の促進効果に注目が集まり、インバウンドを意識したサービスを打ち出しているところも多く見かけるようになりました。ゆびさし英会話カードを設置していたり、英語や中国語、スペイン語といった多言語に対応しているのも、サービスの一貫です。

外国人旅行客による訪日旅行の国別消費金額を見ると、半数以上がアジアという結果になっており、1位:中国、2位:台湾、韓国、4位:香港の消費金額合計だけで2兆6,523億円、全体の約70%を占めています。

同じく観光庁の資料で、訪日外国人消費額の費目別構成比という資料があります。以下の図を見ると、2015年も2016年も依然として買い物にかける金額が高いことが確認できます。2015年と2016年での変化は、宿泊料金と飲食費、交通費は多少増加したものの、コト消費とされる娯楽サービス費ではさほど変化がなく、モノ消費(買い物)の比率は多少減っただけで、劇的な変化はありません。全体の消費額の7割を占める近隣アジアからの旅行客の目的が買い物であるため、この図から読み取れることはまだモノ消費は健在であり、コト消費の経済規模は小さいと言えます。

(出典:観光庁 http://www.mlit.go.jp/common/001179539.pdf)

以下の記事では、現在観光庁から発表されている2017年四半期の訪日外国人による消費額が過去最高となっていることについて書かれていますが、目的別消費額で見ると依然として買い物の比率が高くなっている、とも述べています。日本製品のクオリティはまだ訪日観光客にとって魅力と映っており、コト消費だけでなくモノ消費のニーズも高いということなのでしょう。

この傾向は、コト消費ビジネスモデルを考える上で重要です。つまり、コト消費ビジネスモデルにおいては、体験やイベントだけに特化したものではなく、モノ消費も含めた複合的な要素のあるビジネスモデルが訪日観光客の興味関心を惹くということがいえます。

観光庁が訪日外国人の消費動向調査を発表。17年4-6月の消費額は1兆776億円と前年同期(9534億円)と比べ13.0%増加し四半期で過去最高の数字となっていることが判明した。

観光庁が訪日外国人の消費動向調査を発表。17年4-6月の消費額は1兆776億円と前年同期(9534億円)と比べ13.0%増加し四半期で過去最高の数字となっていることが判明した。

(中略)

消費額の費用項目で見ると、1位買い物(38.5%)、2位宿泊料金(27.5%)、3位飲食費(19.4%)となっているが、娯楽サービス費は3.2%に留まっている。

(出典:Economic News: 訪日外国人の消費が四半期で最高を記録)
http://economic.jp/?p=75627

多くのメディアでは【インバウンドにはコト消費がこれから重要になる】と論じていますが、消費金額や消費の目的別比率から見るかぎり、コト消費がこれから大幅に伸びている、またこれから伸びるという結果は得られませんでした。

しかし、インバウンド消費は増加の傾向があるため、コト消費だけに着目するのではなく、全体的なインバウンド消費が上がっていることに着目すべきです。
以下の資料は矢野経済研究所による国内インバウンド消費(物品購入のみ)についての報道資料です。2015年までは消費金額は順調に伸びており、2015年に1兆4,849億円を記録。2016年には消費額は減りますが、2017年から2020年までの予測値では消費がまた伸びていくと予想されています。

graph-03

(出典:矢野経済研究所 プレスリリース「国内インバウンド市場に関する調査を実施(2016 年)」)https://www.yano.co.jp/press/pdf/1632.pdf

●まとめ

日本ではこれから人口が減っていくことに加えて、生産労働者人口の減少と高齢化率の増加、また生産労働者の買い控えが顕著になっていくことから、モノ消費やコト消費について爆発的な伸びは期待できないでしょう。モノ消費、コト消費というカテゴリ分けをする前に、消費自体が少なくなっているからです。断捨離ブームやモノを持たないライフスタイルが流行し、モノ消費自体をネガティブにとらえる若者が一定数いるのも確かです。いかにモノ消費をせず生活できるか、という風潮が一部の層に支持されていることも確実でしょう。

代わりに訪日外国人観光客を呼び込むことによって、日本国内の消費を促進することが期待されますが、コト消費だけに着目するのではなく、モノ消費も依然として高い関心があることから、消費活動を促すためには、並行してモノ消費を伸ばすための施策を取ることも重要であると言えます。

PR:インバウンド地域創生プロジェクト

街をまるごと多言語化し、訪日外国人(インバウンド)の送客までをサポートします。

bnr-inbound-1000x300

PR:インバウンド対策資料を無料ダウンロード

こちらの資料では、ご提案媒体一覧のほか、ANAご搭乗者様の属性なども紹介しております。御社社内でのご検討資料としてお役立てください。

PR: ANAの広告媒体で訪日旅客に街の魅力をお届け!

ANAのブランド力、航空媒体という特殊性で、地域や街のブランディングや商品・サービスのPRをお手伝いします。


お問い合わせはこちら:

インバウンドNOW運営事務局

担当:陳、田中

proj_ana_media@g.s-cubism.jp

関連記事

  1. 「聖地巡礼」でインバウンド需要を加速させる!参考にすべき3つの事例と自治体側に必要な姿勢

  2. VRを使ったインバウンド対策の事例5つ。観光地から小売店、不動産まで最新技術でさらなる集客を

  3. 【インバウンド対策】ニセコにオーストラリア人を集めた方法とは?

  4. タイのサッカー選手・ティーラシンがサンフレッチェ広島へ加入。訪日タイ人への影響と地方へ呼び込む方法と…

  5. 地域(地方)創生の事例3つ。インバウンド対策と絡めることで、人口減少のストップにつながる

  6. リノベーションがホテル予約の理由に。訪日客の集客に成功した、京都の事例を紹介します

  7. Voyagin、環境省と国立公園オフィシャルパートナーシップを締結。概要や背景、取り組みを解説

  8. インバウンドの施策:インスタグラムで訪日観光客を呼ぶ方法とは

メールマガジン



PR


インバウンド資料ダウンロード



アーカイブ

人気記事ランキング

おすすめ記事

PAGE TOP