インバウンド需要を成功に導くために知っておきたい「ナイトタイムエコノミー」という手段

「外国人観光客を誘致してインバウンド需要を成功に導きたい」と感じている企業や自治体が増えています。「なんとかして地域を盛り上げて経済を活性化させよう」という意気込みを強く感じるのですが、一方で「雄大な自然などの外国人観光客を誘致できるようなコンテンツが無いんです…」という声もよく耳にするようになりました。

そういった声を反映して、今日は「ナイトタイムエコノミー」について取り上げてみたいと思います。ナイトタイムエコノミーとは簡単に言うと「夜の時間に遊んだり観光をすることで経済活動を回す行為」です。これによって自然景勝地などに頼ることなく外国人観光客の誘致や、滞在の満足度を向上させることが可能になります。

しかし、日本では風営法での規制や、交通機関の問題、近隣住民の理解を得ることが難しいことなどもあり、首都圏の一部しか取り入れられていない現状があります。

今回は、世界のナイトタイムエコノミー先進国の事例を見ながら、どういった取り組みを行って夜の時間を楽しんでいるのか掘り下げてみたいと思います。そして、日本でこうした取り組みを行っていくためにはどうすれば良いのか。この記事でナイトタイムエコノミーを理解して、昼間だけではなく夜の経済活動も活発化させていきましょう。

世界一のナイトタイムエコノミー先進国「イギリス」

ナイトタイムエコノミーで世界で一番有名なのがイギリスのロンドンという街でしょう。世界の都市総合ランキングでは5年連続で1位を誇っている都市でもあります。観光庁が発表した”「楽しい国 日本」実現に向けた観光資源活性化に関する検討会議”での説明資料によると、ロンドンの夜間市場は、イギリス全体に年間263億ポンド(4兆円)の経済効果と、125万人の雇用を創出していると記されており、2029年には283億ポンドにまで成長することが予測されていてます。

2016年8月からはロンドンの地下鉄で24時間運行が開始されていて、(現在は5路線/毎週金曜日と土曜日のみ運行)現地の住民や、観光客のナイトライフを支えています。

夜の市長「ナイトメイヤー」の存在

行政とナイトカルチャーを繋ぐ存在として「ナイトメイヤー(夜の市長)」を導入しており(ロンドンでは「ナイトツァー(夜の政策担当長官)」と呼ばれている)ナイトタイムエコノミー振興の「顔役」として、PR活動に従事して広告塔の役割を果たすほか、行政などとの「調整役」として、規制の見直しなどを働きかけています。

この取り組みでの成功を受けて、世界各地でナイトメイヤーを設ける動きが活発化しています。ナイトタイムエコノミーを推進していくには、騒音やゴミの問題、反社会的組織の関与など、トラブルの可能性が常に伴うため、近隣住民や行政との間に入って問題を解決するために働きかける人材が必要とされているのです。

市民の安全を守る「パープルフラッグ」という取り組み

かつて荒廃していたリバプールという街がナイトタイムインダストリー(ナイトクラブ、ライブハウス、レストラン等)の活用等により、週末に人が集まる場所へと変貌を遂げました。

これは「パープルフラッグ」という制度の功績であるといわれています。パープルフラッグは「安心して夜遊びできる街」であると国が認定したことを示します。この認定を得るには、犯罪率の低下や治安の改善、飲酒者への適切な健康対策など7項目の厳しい評価をクリアしなければなりません。

 しかしこのパープルフラッグに認定されれば多くの観光客を呼び込めるとして、各地でパープルフラッグ獲得にむけた動きが加速しています。こうした活動によって観光客をはじめとする「初めてその場所を訪れた人々」でもナイトライフを満喫できるような工夫が施されているのです。

眠らない街「ニューヨーク」

ニューヨークでは地下鉄が24時間運行していて人々のナイトライフの充実を支えています。また、ブロードウェーではショーの開演は20時スタートが一般的となっています。終電を気にしなくても良いため、スタート時間を遅めに設定できるのです。これによって、落ち着いて食事を楽しんだ後、ゆっくりと観劇する事が可能になります。

日本では18時スタートが一般的で、17時に会社を飛び出したとしても、会場に直行するか、軽食で済ませるかという選択肢になってしまうことが多くなります。首都圏ではまだしも、地方都市では飲食店の閉店時間も早く、観劇後に食事をしようと思っても選択肢が狭まってしまうという問題がしばしば起こっているのです。

ニューヨークでは観劇後は22時や23時となりますが、電車も動いているし食事も済ませているため、「もう一杯飲みに行こうか」という流れになります。飲食店やBarも遅くまで営業しているため、深夜になっても客足が鈍ることはありません。

しっかりと売上を立てることで雇用も創出し、経済を回していくという好循環が生まれています。

一部の都市で進みつつある日本のナイトタイムエコノミー

日本でも都市部ではナイトタイムエコノミーの動きも見られます。先ほど挙げた「ナイトメイヤー」の渋谷区版である「渋谷区観光大使ナイトアンバサダー」が2016年に発足しており、ヒップホップMCのZeebra氏などが選ばれ、渋谷という街の夜の魅力を発信したり、清掃活動を行うなどしています。

渋谷の夜といえばハロウィンが挙げられます。ナイトタイムエコノミーに積極的な渋谷区では、スクランブル交差点を歩行者天国にしてめいいっぱいイベントを楽しめるような施策を行っています。締め出すことはおそらく簡単なことですが、あえてしっかりと向き合うことで「夜のハロウィンといえば渋谷」というイメージを構築していきました。

また、先述した「渋谷区観光大使ナイトアンバサダー」などが地域住民や近隣店舗、有志の方々などで清掃活動をしっかりと行うなどしてトラブルを回避するだけでなく、そこから波及する効果をイメージして取り組んでいる姿勢は参考になる部分があるでしょう。

新宿にあるロボットレストランの22時から行われるレイトショーも外国人観光客に人気を博していますし、六本木アートナイトというイベントも80万人を超える動員を記録するなどしています。六本木の街中いたる所にアート作品が多数展示され、土曜日の朝10時から日付をまたいで日曜日の18時まで「32時間」絶えず様々な会場で、様々な企画が行われます。メインの時間帯は終電が終わってから。朝日がのぼるまで盛り上がりを見せます。こうしたイベントでも、アートや音楽を通じて多くの人にナイトライフを楽しんでもらうことができるのです。

外国人観光客に日本の夜を楽しんでもらうために

日本では元来「夜はしっかりと寝る」という文化が定着しており、ナイトタイムエコノミーはまだまだ理解されていない部分も多くあります。しかし、インバウンド需要が加速した現代では、昼と夜の両輪で経済効果を向上させていく必要があると言えます。

そのためには交通網の整備や深夜帯の働き手の確保、騒音問題や酩酊者のケアなど課題は山積みです。

地方ではほとんどナイトタイムエコノミーは進んでいない状況にありますが、小さな地域で小さく初めてみることで、これらの課題は解決しやすくなったりもします。大都市での交通網整備は行政との連携が必須となってきますが、小規模なイベント単位であれば民間の力で開催まで漕ぎ着けることも可能ではないでしょうか。

暗がりの雰囲気や独特の高揚感、ライトアップイベントなど、夜にしか出せないその街の魅力もあります。一番避けなければならないのは固定概念に縛られること。外国人観光客だけでなく、地元住民も共に盛り上がっていけるような催しは、早い時間に行わなければならないという決まりはありません。

小さな活動が、やがて大きな”うねり”となることもあります。世界に目を向けて、さまざまな事例を知り、インバウンド需要を成功に導いていくための足掛かりとして「ナイトタイムエコノミー」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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