コト消費がインバウンド産業に与える影響とは?地方はモノ消費と絡めて集客につなげよう

コト消費という、「商品やサービスから得る”体験”」を重視する人が増えています。というのも、今まではモノ消費と呼ばれる「物を所有すること」に価値を感じる考え方が主流でした。しかし物質的に豊かになったことで、「心を満たしたい」と考える人が多くなっているのです。

この考え方は日本人だけでなく、インバウンド客にも現れています。今までは日本製品を買うために旅行に来ていた人が、日本文化や食事を楽しみに来日しているのです。

とはいっても、コト消費の消費額はまだまだ大きくありません。実際に、観光庁の「訪日外国人消費動向調査」では、

  • 「買い物(37.1%)」
  • 「宿泊料金(28.2%)」
  • 「飲食費(20.1%)」

と、モノ消費である買い物が上位を占めています。

【出典】観光庁「平成29年年間値(速報)及び平成29年10-12月期の調査結果(速報)」

この結果を見る限り、コト消費をアピールしても、集客は期待できないように感じますよね。

そこで今回は、

  • コト消費の意味や広まった背景
  • コト消費を使ったインバウンド客へのアピール方法
  • コト消費とモノ消費を絡めて集客に成功した長野県

をご紹介します。この記事でコト消費について大まかに理解し、インバウンド客のニーズをつかみましょう。

コト消費の意味や広まった背景とは?

コト消費は最近になって登場し始めた言葉です。まずは言葉の意味や、広まった背景についてご紹介します。

こちらの内容はすべて「消費者理解に基づく消費経済市場の活性化研究会」のデータを使用しています。

【出典】消費者理解に基づく消費経済市場の活性化研究会「消費インテリジェンス研究会 報告書」

コト消費とは、商品やサービスから得る体験を重視する消費行動

コト消費とは、「商品やサービスの購入で得る体験に価値を感じる消費行動」のことです。例えば食事や旅行、ミュージカルの鑑賞など、形に残らない物にお金をかける傾向が強くなります。

「消費インテリジェンス研究会 報告書」にある日本人の支出の内訳でも、1世帯あたりのサービスへの支出は、1980年には32.7%しかありませんでした。しかし2015年には、42.4%に増加。「物を所有するより、得られる体験にお金をかけたい」と考えている人は、69.2%にものぼり、体験を重視する人が増えています。

コト消費が広まった背景には、物やお金に関する考え方の変化がある

以前は「モノ消費」という、物を所有することに価値を感じる考え方が主流でした。しかし、現在は以下のように考える人が増えています。

  • 自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶ
  • 自分の好きなものはたとえ高価でも貯金して買う
  • 自分が気に入った付加価値には対価を払う

これらはすべて「コト消費」の考え方です。

背景に、物質的に豊かになったことで心の豊かさを重視する人が増えたことがあります。実際に、2000年には50.2%だった「とにかく安くて経済的なものを買う」という人が、2015年には34.5%まで減っています。

コト消費は7つに分けることができる

コト消費は7種類あります。

1.純粋体験型コト消費

宿泊やアクティビティなど、なにか特別な体験をすること。

  • 例:旅館への宿泊、温泉、着物のレンタル、スキーなど

こちらは、「インバウンド客に人気の見るスポーツ・するスポーツとは。ー「スポーツ観光」の調査より」でもご紹介しています。

2.イベント型コト消費

商業施設でイベントを行って集客し、モノ消費につなげること。

  • 例:バレンタイン、クリスマスといった季節のイベントなど
3.アトラクション施設型コト消費

商業施設に専門的な施設やアトラクションを作って集客すること。

  • 例:美術館、水族館、映画館など
4.時間滞在型コト消費

居心地の良い空間を作り出し長時間の滞在をしてもらうことで、モノへの購入につなげること。

  • 例:蔦屋書店など
5.コミュニティ型コト消費

商業施設を中心としたコミュニティを作ることで、モノの購入につなげること。

  • 例:アウトドアブランドのショップで登山好きが集まるコミュニティを作るなど
6.ライフスタイル型コト消費

商業施設やブランドがライフスタイルを提唱しファンになってもらうこと。

  • 例:Apple Store、IKEA、無印良品
7.買い物ワクワク型コト消費

買い物自体がワクワクするような、店舗設計やお店の雰囲気作りを行い、購買意欲を刺激すること。

  • 例:ヴィレッジヴァンガード、東急ハンズ

コト消費を重視する傾向は日本人だけでなく、インバウンド客にも現れています。次で、コト消費を集客に活用する具体的な方法をご紹介します。

コト消費とインバウンドの関係:モノ消費とつなげたアピールがカギ

コト消費はインバウンド客の集客にも活用できます。そしてニーズにあった集客を行えば、訪日外国人が地方へ訪れるきっかけにもなるのです。

ここからはコト消費を使った集客方法を、観光庁の「訪日外国人消費動向調査」を参考にしながらお伝えします。

【出典】観光庁「平成29年年間値(速報)及び平成29年10-12月期の調査結果(速報)」

訪日外国人の消費動向は、まだまだモノ消費である「買い物」がトップ

観光庁の調査によると、訪日外国人の旅行中の消費額は

  • 2011年:8,135億円
  • 2016年:3兆7,476億円

と、年々増えています。しかし消費の内訳を見ると、

  • 「買い物(37.1%)」
  • 「宿泊料金(28.2%)」
  • 「飲食費(20.1%)」

と、まだまだモノ消費である「買い物」を楽しむ人が多いことが分かります。

この理由には、訪日外国人の出身地域が関係しています。彼らは、中国や台湾、タイ、シンガポールといったアジアの地域から来日。アジア人は日本の化粧品や家電といった、モノの購入を楽しみに来日する傾向が強いため、買い物の消費額が大きくなるのです。

コト消費を使った集客方法は訪日外国人が地方へ訪れるきっかけとなる

コト消費は、インバウンド客を地方へ呼び込む集客方法にもなります。

というのも、アジアからの観光客はリピーターがほとんど。実際に、韓国人の72%、台湾人の77%、香港人の82%が「2回目以上の来日である」と、JTB総合研究所の調査で答えています。

何度も日本を旅行する外国人は、東京や大阪といった首都圏をすでに訪れています。そのため、東北、北陸、信越と、地方を訪れる傾向にあるのです。

【出典】株式会社JTB総合研究所「訪日外国人旅行者の概況と訪日中の情報収集について」

しかし「いつかは地方を訪れてくれるから」と、待っているだけでインバウンド客が増える訳ではありません。先ほどご紹介したモノ消費と絡めてアピールすることで、地方への訪問と消費額アップにつながるのです。

コト消費をモノ消費につなげることで、地方の消費額がアップ

コト消費を促すには、モノ消費とつなげたアピールが必要です。

というのも、コト消費はまだまだ大きな消費につながっていません。しかし、コト消費はモノ消費を促す効果があります。

例えば、

  • 旅行先のアクティビティや体験に関わるモノに興味を持ち購入する
  • 体験の中で地元の人と交流した際に推薦されてモノを購入する

などです。

コト消費とモノ消費を絡めた方法で集客をすることで、体験への参加(コト消費)から購入(モノ消費)へとつながるのです。

実際に、長野県で実施しているコト消費とモノ消費が同時に楽しめる体験ツアーをご紹介します。

事例:日本旅行が地元農園との協力で訪日外国人向けにりんご狩りを企画

日本旅行が長野県にある地元の農園と協力して、訪日外国人向けにりんご狩りツアーを企画しています。どのようにしてコト消費からモノ消費へつなげているのか、ご紹介します。

長野県で「日本旅行ファーム」という訪日外国人向け農園をオープン

日本旅行が長野県の飯山市に、2017年9月27日に訪日外国人向け観光農園をオープンしました。「日本旅行ファーム」という名前で、地元の塩崎農園と提携し、りんご狩りツアーを開催しています。

目的は、

  • 訪日外国人のニーズであるコト消費へ対応する
  • 農業を通して地域の活性化をめざす

という2つです。

ツアーは1回1,500円。りんご狩り(食べ放題)、英語ガイドの説明、お土産のりんご3個をもらうことができます。

コト消費からモノ消費へつなげるために、りんごを使った食品を販売

りんご狩りの際、モノ消費へつなげるために

  • りんごジュース
  • りんごを使ったはちみつ

など、関連する商品を一緒に販売しています。りんご狩りでりんごのおいしさを知れば、食品にも興味を持ってくれると考えています。

アジアの4つの地域から30人の訪日外国人が参加

ツアーが本格的にスタートしてからは、中国、台湾、香港、フィリピンの4エリアから応募がありました。1回のツアーで約30人もの訪日外国人が参加しており、りんご狩りを楽しんでいます。

参加者からは「りんご狩りはとても楽しく、よい思い出ができた。りんごはとてもおいしいし、スタッフも皆さんいい方」という声が寄せられており、満足度の高い体験ツアーとなっています。

【出典】観光経済新聞「日本旅行、りんご園に在日外国人を招待」

今後も毎年9月末から、12月初旬まで開催する予定です。

このように、モノ消費とコト消費を絡めた体験ツアーを開催することで、訪日外国人のニーズを満たすことができるはずです。

コト消費はモノ消費とのセットプランを用意すれば、地方のアピールと売上につながる

ここまでをおさらいしましょう。

コト消費とは、「商品やサービスの購入で得る体験に価値を感じる消費行動」のことです。これは日本人だけでなく、インバウンド客にも現れている傾向。「日本の文化を体験したい」という人が増え、旅行スタイルに変化が起きています。

とはいっても、訪日外国人の消費額を見るとまだまだモノ消費である買い物がトップです。実は、訪日外国人の半分以上は中国や台湾といったアジア出身。アジア人は「日本文化の体験もしたいけれど、日本製品も買いたい」と、コト消費だけでなくモノ消費を求める傾向がまだまだ強いのです。

しかし、アジア人の観光客は2回目以上の来日であるリピーターがほとんど。すでに東京や大阪といった首都圏は旅行しているため、地方へ興味を持つ人が増えています。彼らのニーズを満たすためにも、コト消費とモノ消費を絡めた集客が欠かせません。

そこで、りんご狩りツアーを企画している長野県の事例をご紹介しました。りんご狩りという「体験」をした後に、「買い物」でりんごを使った食品を購入できるようなツアーを提案。コト消費とモノ消費を絡めて、訪日外国人の満足度を高めています。

このように、コト消費はまだまだ大きな消費額とはなっていませんが、新たな集客方法として活用することはできます。モノ消費と絡めた体験ツアーを企画すれば、地方へ訪問するきっかけに。そしてツアー中に買い物をしてもらえれば、地方の消費額アップにつながるはずです。

コト消費とモノ消費に関しては、「「『モノ消費からコト消費へ』は本当?訪日外国人の目的別消費額の比較から見るインバウンド効果」」でもご紹介しています。気になる方は、ぜひ読んでみてください。

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