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「クルーズ観光って本当にインバウンド効果があるのかな。できればもっと消費額を上げたい」
と感じているインバウンド担当の方。
クルーズ船を利用する訪日外国人は増えており、2017年には約253万3,000人を突破しました。
しかしクルーズ船を利用する観光客は増えているものの、クルーズ客の消費額は、
- 一般客:12万136円
- クルーズ客:3万6,539〜11万6,551円
と、一般客ほど多くありません。
この結果を見ると、クルーズ観光によるインバウンド効果は少ないと感じてしまいますよね。
そこで今回は、
- 国土交通省が発表したクルーズ観光の目標
- クルーズ観光の受け入れ状況
- クルーズ客の消費額をアップさせた沖縄県の事例
を紹介します。
クルーズ観光のイメージはつきにくいかもしれませんが、概要だけならハードルは高くありません。
まずはクルーズ観光について、ざっくりと理解しましょう!
国土交通省がクルーズ観光で500万人のインバウンド客を目指すと宣言
国土交通省は“訪日クルーズ旅客を2020年までに500万人”という目標を掲げています。
クルーズ観光とは、船で数日間かけて目的地に向かう旅行スタイルのこと。欧米を中心に世界中の観光客から人気です。
世界のクルーズ観光利用者数は、
- 2005年:1,374万人
- 2015年:2,320万人
と、近年になって2倍近く増えています。
そこで日本もクルーズ観光の促進をスタートすることで、さらなる訪日外国人の呼び込みにつながると予想しています。
続いては日本におけるクルーズ観光の受け入れ状況や、訪日外国人がクルーズ観光を選ぶ理由を解説します。
日本におけるクルーズ観光の受け入れ状況:利用人数や人気のエリアとは?
クルーズ観光について、
- クルーズ船を利用する訪日外国人の数
- クルーズ観光で人気のエリア
- クルーズ観光のスケジュール例
- クルーズ観光が人気を集める理由
を紹介します。
こちらの数字は、すべて以下の国土交通省のデータを参考にしています。
クルーズ観光を利用する訪日外国人は、約253万3,000人
クルーズ観光を利用する訪日外国人の数は、以下の通りです。
- 2015年:約111万6,000人
- 2016年:約199万2,000人
- 2017年:約253万3,000人
2016年から2017年にかけて、約54万1,000人も増えています。目標の500万人まで、あと半分ですね。
日本へのクルーズ観光は、主に以下のエリアから利用できます。
- 中国
- ロシア
- 台湾
- 香港
- アメリカ
アジアなど近い国からの寄港が多いようです。
クルーズ観光で人気の旅行先は「博多」など、西日本エリアに集中
2017年、日本へクルーズ船が入港した回数は2,765回。2016年より約37.1%も増えています。
人気エリアとそれぞれの入港回数は、以下の通りです。
- 博多港:326回
- 長崎港:267回
- 那覇港:224回
特に九州や沖縄エリアが人気です。
この増加やエリアの偏りは、中国からのクルーズ観光客が増えているからです。
例えば上海から福岡までの877kmは、東京から福岡の1,096kmとほとんど変わりません。私たちが国内旅行をする感覚で、中国から福岡まで旅行できるのです。
クルーズ観光のスケジュール:消費額が増えにくい原因は自由時間の短さ
例えば中国の上海から博多へのクルーズ観光の場合、スケジュールは以下の通りです。
【1〜2日目】
- 朝に上海を出発し、2日間かけて日本へ移動。
【3日目】
- 朝9時に日本へ到着し、入国手続きを済ませる。
- 10時頃から自由行動がスタート、まずは市内の観光スポットを散策。
- 昼食は各自で食べ、午後から買い物。免税店やドラッグストアで、化粧品やお菓子を購入。
- 夕食を博多港の近くにあるレストランで食べて、19時には船に戻る。そして日本を出発。
【4〜5日目】
- 2日間かけて、上海へ戻る。
このように4泊5日であっても、観光や買い物を楽しむのは1日のみ。移動に時間が必要で、そこまで自由時間は多くありません。宿泊もしないため、消費額はどうしても増えにくいのです。
クルーズ客の消費額に関しては、「2018年度上半期インバウンド客の旅行消費額。クルーズ客が増加するも消費は増えず」でも詳しく紹介しています。

飛行機の方が買い物もしっかりとできるのに、いったいなぜクルーズ観光を選ぶのか、疑問に感じるかもしれません。
続いては短いスケジュールにもかかわらず、訪日外国人がクルーズ観光を選ぶ理由を解説します。
インバウンド客がクルーズ観光を選ぶ2つの理由
訪日外国人は、以下の理由からクルーズ観光を好んでいます。
- 観光スポットや世界遺産へのアクセスがスムーズ
- 荷物制限を気にすることなく、買い物できる
それぞれの理由を解説します。
1.地方の観光スポットへのアクセスがスムーズ
海外からのクルーズ船を受け入れている地方エリアは、世界遺産や文化遺産など、観光スポットの多い場所です。
- 静岡県・清水港:富士山
- 広島県・広島港:原爆ドーム、厳島神社
- 兵庫県・神戸港:姫路城
飛行機で日本を訪れた場合、まず空港から市内のホテルへ、そしてホテルから目的地までのルートを検索する必要があります。場所によっては空港からのアクセスが悪く、なかなかスムーズに到着できません。
しかしクルーズ船ならば、港が観光スポットの近くに位置するだけでなく、到着後はツアーバスが迎えに来ます。そのままバスで観光スポットに到着できるため、目的地までのルートを調べる必要がありません。
この自由時間に“オプショナルツアー”に参加する訪日外国人も多いです。オプショナルツアーについては、「オプショナルツアーとは?着物体験やスキーなどコト消費をアピールすれば、地方を訪れるきっかけとなる」をチェックしてみてください。
2.荷物制限を気にすることなく買い物できる
クルーズ観光を利用することで、荷物制限を気にすることなく家電や化粧品など購入できます。
多くの航空会社では、「スーツケースなどの受託手荷物は1人につき1個(23kg)まで」など、個数と重さに制限があります。それ以上の荷物を預けると、追加料金が必要に。そのため家電など大きな荷物を購入したくても、1〜2個におさえる必要があります。
クルーズ船は、飛行機ほど荷物制限が厳しくありません。クルーズ船によっては30kgまで持ち込むことができ、重さを気にすることなく買い物できます。
とはいえ、冒頭でも述べたようにクルーズ客の消費額はまだまだ少ないのが現状です。そのため、売上アップに必要な対策もイメージしにくいですよね。
そこで続いてはショッピングモールなどの売上アップに成功した、沖縄県にある那覇港の事例を紹介します。
那覇港の事例:クルーズ観光の利用客のために免税やWi-Fiなどを準備し、売上アップ
沖縄県の那覇港が、クルーズ観光の増加にともなってインバウンド対策を実施したところ、2015年7月に1カ月で約4万人を集客しました。
那覇港の近くにあるショッピングモールも、2015年度の売上は、
- イオン琉球:691億1800万円
- スーパーのサンエー:1645億5300万円
を記録。ちなみに、イオン琉球は過去最高の売上でした。
以下では、那覇市のショッピングモールが実施したインバウンド対策を詳しく紹介します。
クルーズ船を利用する観光客のために、那覇市が準備した3つのこと
インバウンド客が本格的に増える前に、那覇市にあるショッピングモールは、以下3つのインバウンド対策を実施しています。
- 無料Wi-Fiの導入
- 免税カウンターの設置
- 沖縄の食材の取り扱いを充実させる
「買い物をしたい」というインバウンド客のニーズに応えて、スムーズに買い物できる環境を整えました。
その結果、那覇港から入港する旅客の消費額は、1日につき1人あたり約3万8,000円を記録しています。
クルーズ観光の受け入れエリアに必要なインバウンド対策
クルーズ観光を受け入れるエリアでは、以下のインバウンド対策が欠かせません。
- Wi-Fiを利用できる環境
- クレジットカード決済や免税の導入
- 日本らしいお土産や食材
沖縄県でショッピングを楽しんだ人が満足した項目を見ても、
- クレジットカードの対応(53.6%)
- 土産品(51.9%)
- Wi-Fi(37.1%)
など、力を入れたインバウンド対応と重なるところがあります。
3つのインバウンド対応を実施することで、訪日外国人の満足度がアップ。集客に加えて、小売店などの売上の増加が期待できます。
また、インバウンド客にとっては「免税であるかどうか」が買い物をする理由になることも。免税の導入については「インバウンド消費を加速させる免税店!タックスフリーとデューティーフリーを正しく理解し、上手に活用しよう」で詳しく解説しています。合わせてチェックしてみてください。
クルーズ観光の利用客へのインバウンド対策は、小売店などの消費額アップにつながる
ここまでをおさらいします。
“クルーズ観光”とは、船で数日間かけて日本に到着する旅行スタイルです。
以下の理由により、訪日外国人から人気を集めています。
- 観光スポットや世界遺産へのアクセスがスムーズ
- 荷物制限を気にすることなく、買い物できる
そのため2017年、クルーズ船を利用した観光客は約253万3,000人を記録、人気エリアは博多や長崎、那覇など西日本に集中しています。
しかしクルーズ客は増加しているものの、消費額は大きくありません。そこでクルーズ観光の利用客の消費額をアップさせた事例として、沖縄県の那覇市を紹介しました。
那覇市にある小売店は、以下のインバウンド対策を実施して、1日あたり3万8,000円の消費額を記録しています。
- Wi-Fiを利用できる環境
- クレジットカード決済や免税の導入
- 日本らしいお土産や食材
クルーズ観光客の消費アップには、買い物しやすい環境を整えることが欠かせません。クルーズ船の受け入れエリアが、これらのインバウンド対策を実施することで、小売店はさらなる集客と消費額アップが期待できます。
そしてクルーズ観光で買い物だけでなく、宿泊も考えてもらうためには“リノベーションホテル”など、訪日外国人が宿泊したくなる施設を準備することが必要です。
「リノベーションホテルって何だろう」と感じた方は、「リノベーションがホテル予約の理由に。訪日客の集客に成功した、京都の事例を紹介します」も合わせてチェックしてみてください。
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