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サスティナブルツーリズムとは?環境や文化を守ることが、持続的な観光客の呼び込みに

目次

「サスティナブルツーリズムってなんだろう…」

と感じている地方自治体の方。

サスティナブルツーリズム(サステイナブルツーリズム)とは、「持続可能な観光を求める考え方や行動」です。

マスツーリズム(いわゆる観光旅行)が広まったことで、一部の地域では環境や文化が破壊されることがありました。

そこで登場したのがサスティナブルツーリズムです。これにより、地域の観光資源を守りつつ、観光地本来の姿を楽しんでもらえることが期待できます。

地方自治体は環境問題に関心のあるインバウンド客を呼び込めるうえに、地域が継続的に活性化します。

とはいえ、具体的に何をすればよいのかは、なかなかわかりにくいですよね。

そこで今回は、

  • サスティナブルツーリズムとは、「持続可能な観光」を求める考え方や動き
  • 日本におけるサスティナブルツーリズムの取り組みや事例:群馬県みなかみ町
  • 地域がサスティナブルツーリズムに取り組むときのポイント3つ
  • サスティナブルツーリズムに欠かせない国際認証と全国フォーラム

を紹介します。

「サスティナブルツーリズムを目指すのは難しそう」と感じるかもしれませんが、概要をつかむだけならハードルは高くありません。

まずはサスティナブルツーリズムについて、ざっくりと理解しましょう!

サスティナブルツーリズムとは、「持続可能な観光」を求める考え方や動き

サスティナブルツーリズム(サステイナブルツーリズム)とは、「持続可能な観光」という意味です。

具体的には観光地における環境の悪化や文化の侵害、過度な商業化を避けながら、観光地本来の姿を求める考え方や行動のことを指しています。

もともと観光や旅行は、地域の環境や自然、文化を切り売りすることが少なくありません。サスティナブルツーリズムでは観光資源を守りながら、観光客に本物の自然体験などを提供することが可能です。

また国連は、2017年を「開発のための持続可能な観光の国際年」と定めました。この決定により、サスティナブルツーリズムを推奨するエリアや国は今後さらに増加することが予想されています。

サスティナブルツーリズムに似た言葉として「エコツーリズム」も普及しています。

エコツーリズムの特徴や事例について、詳しくは「エコツーリズムとは?地域の自然や環境を保護しながら、インバウンド集客を実現するポイントを解説」をご一読ください。

続いては、サスティナブルツーリズムが広まった要因を解説しますね。

サスティナブルツーリズムが普及する要因はマスツーリズムによる環境や文化の破壊

サスティナブルツーリズムが広まった要因は、「マスツーリズムによる環境汚染や自然破壊などの悪化、過度な商業化が増えたこと」です。

マスツーリズムとは、観光や旅行が幅広い層の人に広まった現象です。

もともと観光は、富裕層を中心に楽しまれていたもの。第二次世界大戦が終わった頃から、アメリカやヨーロッパなどの先進国の一般市民にも普及し、多くの人が楽しめる世の中になりました。

マスツーリズムによって旅行の低価格化や経済の繁栄、観光芸術の誕生などメリットはあります。

しかし観光の普及と同時に、以下の問題が発生した地域も少なくありません。

  • 環境汚染
  • 自然や文化の破壊
  • 観光地の疲弊
  • 旅行者のモラルの低下

観光資源である自然や文化が破壊されては、旅行できる環境を提供することは難しいです。

またこのままだと地域が観光の恩恵を継続的に受けることもできないので、「観光客と地域住民の両方潤うことが重要である」として、サスティナブルツーリズムの考え方が誕生しました。

サスティナブルツーリズムで得た収益は、マスツーリズムで破壊された観光資源を修復するための資金として使われることも。

環境を守りながら、観光客に本物の体験を提供することを目指しています。

またマスツーリズムの弊害として、観光地のキャパを超えるほどの観光客が訪問して観光資源を過剰に利用する「オーバーツーリズム」も発生しています。その結果、観光客を断りたいという「ノーモアツーリズム」の声をあげる観光地も少なくありません。

オーバーツーリズムやノーモアツーリズムについて、詳しくは「日本の観光地がノーモアツーリズムを主張。観光公害の事例と対策を解説します」を参考にしてみてください。

サスティナブルツーリズムで提供する観光やツアーの例

実際にサスティナブルツーリズムを実践している地域では、以下のような観光やツアーを提供しています。

  • ラフティングなどのアクティビティ
  • 歴史ある街並みや建物の見学ツアー
  • 国立公園の散策

また、観光やツアーを提供するだけがサスティナブルツーリズムではありません。以下のような取り組みもサスティナブルツーリズムに当てはまります。

  • 入境する人数を制限する
  • 必要な搭乗客のみに機内食を出す
  • 電気自動車の排ガスを規制する

上記の取り組みによる収益の一部は、破壊された環境や文化の修復に使用します。

サスティナブルツーリズムのターゲットは環境問題に興味がある高所得者層や若年層の旅行者

サスティナブルツーリズムを好むのは、例えば以下のような人です。

  • 社会や環境問題に関心の高い高所得者層
  • 若年層の旅行者

環境問題に関心があるからこそ、サスティナブルツーリズムに取り組んでいる地域を高く評価し、旅行を計画することが少なくありません。

ここまでサスティナブルツーリズムについて、解説しました。

とはいえ、どのような観光がサスティナブルツーリズムなのか、まだまだイメージしにくいですよね。

そこで次は、サスティナブルツーリズムを実践している群馬県みなかみ町の事例を紹介します。

日本におけるサスティナブルツーリズムの取り組みや事例:群馬県みなかみ町

群馬県にあるみなかみ町は、ラフティングが盛んな場所です。そのラフティングを生かして、サスティナブルツーリズムに取り組む地域として注目を集めています。

サスティナブルツーリズムに取り組んでいるのは、ニュージーランド出身のマイク・ハリス氏が1998年に創設したアドベンチャーツアー会社「キャニオンズ」

自然を保護しながら観光客を受け入れるコンテンツとして、ラフティングを提供しています。

具体的な取り組みは、次で詳しく解説しますね。

安全基準や自然配慮のルールを徹底したラフティングで集客

みなかみ町はもともと温泉やスキーが人気の観光地でしたが、ハリス氏がみなかみ町に来たとき、観光客は以下のように減少していました。

  • 1990年代後半:約170万人
  • 2009年:約86万人

また日本のアウトドア業界は、海外のような事業者間で統一された基準がありません。つまり、安全や自然への配慮に関するルールがあいまいなため、経験が浅くて品質の良くない業者も参入できてしまう状態でした。

出典:経済産業省「事例検証」

しかしハリス氏はみなかみ町を「世界的選手権ができるほどの好立地」と考え、観光資源を活用しながら観光客を増やすために、ラフティング事業をスタートします。

ラフティングや文化体験を提供し、観光客は約366万人まで回復

ラフティング事業をスタートするとき、ハリス氏は以下のことを実施しました。

【ラフティングなど観光資源の提供】

  • 町内のアウトドア会社同士で自然環境の活用のあり方を話し合う
  • 事故防止として、普通救命講習など資格を持ったガイドを採用する
  • ラフティングだけでなく、和太鼓や田植えの体験ツアーも提供する

安全や自然を守りながら、ツアー客に田植えなど地域特有の文化体験も提供しています。

その結果、2016年度にみなかみ町を訪れた観光客は、約366万人を記録しました。

出典:群馬県観光局観光物産課「平成28年観光客数・消費額調査(推計)結果」

ラフティング以外に和太鼓や田植えを提供した理由は、「インバウンド客に人気の高いコト消費のひとつだから」です。

コト消費について、詳しくは「コト消費がインバウンド産業に与える影響とは?地方はモノ消費と絡めて集客につなげよう」を参考にしてみてください。

みなかみ町はWi-Fi環境の整備などインバウンド対応も実践

さらにみなかみ町は、以下のインバウンド対応も実施しています。

  • Wi-Fi環境の整備
  • 映像メディア「Minakami TV」を作成し、町の様子を配信
  • 多言語パンフレットの作成

インバウンド客のニーズに沿って旅行環境を整えることで、サスティナブルツーリズムに注目する訪日外国人の満足度も高めています。

ここまでサスティナブルツーリズムの事例をお伝えしました。

続いては、自分たちの地域でサスティナブルツーリズムを提供するときのポイントを紹介します。
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地域がサスティナブルツーリズムに取り組むときのポイント3つ

ここからは、地域がサスティナブルツーリズムに取り組むときのポイントとして、

  • 多言語での対応を充実させておく
  • メインのツアーとあわせてコト消費のコンテンツを用意しておく
  • 地域に合ったサスティナブルツーリズムの方法を考える

の3つを解説しますね。

対策1:多言語での対応を充実させておく

1つ目は「多言語での対応を充実させておく」です。

サスティナブルツーリズムを提供しても、外国語での情報発信や接客をしていなければ、訪日外国人は観光を楽しむことができません。

なるべく多くの言語で対応できるように、対策を準備しておきましょう。

対応は例えば、

  • 地域のホームページを多言語に対応させておく
  • 多言語のパンフレットを作成する
  • ホテルは翻訳機を導入してスムーズに会話できるようにする

などです。

おすすめの多言語対策は、「インバウンド客への多言語対応でスムーズな接客を! 手軽にできる対策からおすすめアプリまでご紹介」をご一読ください。

対策2:メインのツアーとあわせてコト消費のコンテンツを用意しておく

2つ目は「メインのツアーとあわせてコト消費のコンテンツを用意しておく」です。

みなかみ町の事例では、ラフティングとともに和太鼓や田植えの体験を提供していました。そしてお伝えしたように、訪日外国人は日本文化を体験できる「コト消費」を好む人が増えています。

コト消費は例えば、

  • 着物の体験
  • 旅館での宿泊
  • 日本食作り

などです。

地域の観光資源や文化を生かしながら提供できるものがないか、一度考えてみましょう。

対策3:地域に合ったサスティナブルツーリズムの方法を考える

3つ目は「地域に合ったサスティナブルツーリズムの方法を考える」です。

もともとサスティナブルツーリズムは、地域にある観光資源の破壊を防ぐために生まれた考え方だとお伝えしました。そのため地域の環境を破壊する、地域住民が住みにくくなるものは、サスティナブルツーリズムとして適しているとはいえません。

地域を守りながら、観光客も集客できるコンテンツを提供しましょう。

地域に合ったツーリズムを模索するときは、「ニューツーリズム」の中から考えるとわかりやすいです。

詳しくは「ニューツーリズムとは?インバウンドのニーズに合わせた新たな観光スタイルについて徹底解説!」をご一読ください。

ここまでサスティナブルツーリズムに取り組むときのポイントを解説しました。

最後に、地方自治体が知っておきたい情報を紹介します。

サスティナブルツーリズムに欠かせない国際認証と全国フォーラム

地方自治体がサスティナブルツーリズムについて知っておきたいこととして、

  1. サスティナブルツーリズム国際認証
  2. 日本エコツーリズムが開催する全国フォーラム

の2つを解説しますね。

サスティナブルツーリズム国際認証:環境や文化を守る観光地の証

「サスティナブルツーリズム国際認証」とは、サスティナブルツーリズム達成の目安や指標となる制度です。

世界共通の認証であり、認証を受けているだけで「環境や文化を守る意識のある観光地」だとみなされることが少なくありません。国際認証を取得することで、インバウンド客が増える可能性があります。

例えば、豪華客船「ロイヤル・カリビアン・クルーズ」は、サスティナブルツーリズム国際認証のある地域での陸上ツアーを優先的に採用しています。

認証を持っていることでクルーズ観光の寄港地となり、今までよりたくさんの観光客が訪問する可能性も。観光客が増えることで、地域にある小売店や飲食店は売上アップが期待できます。

世界的な認証だからこそ、取得しておくとインバウンド客や海外の旅行会社などから注目度が高くなるはずです。

サスティナブルツーリズム国際認証を取得しているエリア

世界で国際認証を取得しているエリアは、以下の通りです。

【アイスランド】

  • スナイフェルス半島
  • 西部フィヨルド

【スペイン】

  • カタルーニャ州
  • ヒホン
  • ラ・パルマ島
  • アラン谷
  • ランサローテ島

【メキシコ】

  • プエルト・エスコンディード
  • ワタルコ
  • ヌエボ・バジャルタ
  • イスタパ

【オーストラリア】

  • スレドボ
  • ロットネスト島

【ニュージーランド】

  • カイコウラ

実際にスペインの2017年度における観光客数は、約8,200万人を記録しました。

出典:MSN「スペイン、昨年の訪問観光客数で米国抜き世界第2位に」

国際認証の取得が、観光客が増えるきっかけとなります。

サスティナブルツーリズム国際認証の手続き

国際認証を受ける方法ですが、現時点では日本語の窓口がありません。

海外の団体に申請する必要があり、受付は外国語のみ。また認証機関に、100万円以上の支払いが必要になる場合もあります。

出典:富士通総研「サステイナブル・ツーリズム国際認証取得の重要性」

ただし現在、日本エコツーリズムセンターが日本語で手続きできる国際認証の制度を整えています。

今後は日本エコツーリズムセンターによって、国際認証の手続きが簡単になる可能性も。また日本国内でフォーラムなども開催されているので、国際認証について学ぶことは可能です。

日本エコツーリズムセンターが開催する全国フォーラム

サスティナブルツーリズムに関する全国フォーラムが、NPO法人日本エコツーリズムセンターによって開催されています。

全国フォーラムでは、講演やパネルディスカッション、認証に関する研究会などに参加でき、サスティナブルツーリズムに関する知識や事例を学ぶことができます。

全国フォーラムは2014年から、以下5つのエリアで開催されました。

  • 和歌山田辺市「熊野フォーラム」
  • 群馬県片品村「尾瀬・片品フォーラム」
  • 秋田県仙北市「秋田フォーラム」
  • 長崎県島原半島「島原半島フォーラム」
  • 東京都渋谷区「東京フォーラム」

イベントに参加することで、実際にサスティナブルツーリズムを実践している地域の取り組みを聞くことができます。

これからサスティナブルツーリズムに取り組む地域は、まずフォーラムなどに参加してみるのがおすすめです。

サスティナブルツーリズムを実践して、地方自治体は長期的なインバウンド効果を得よう

今回は、サスティナブルツーリズムについて解説しました。

サスティナブルツーリズム(サステイナブルツーリズム)とは、観光地における環境の悪化や文化の侵害、過度な商業化を避けることを目的に、「持続可能な観光」を求める考え方や行動です。

サスティナブルツーリズムの事例として、群馬県みなかみ町を紹介しました。ラフティングをメインに地域の資源や観光客の安全を守りながら、訪日外国人に満足度の高いツアーを提供しています。

これからサスティナブルツーリズムに取り組むときのポイントとして、以下の3つを紹介しました。

  • 多言語での対応を充実させておく
  • メインのツアーとあわせてコト消費のコンテンツを用意しておく
  • 地域に合ったサスティナブルツーリズムの方法を考える

また日本エコツーリズムがサスティナブルツーリズム国際認証に関するフォーラムを定期的に開催しているので、参加することで全国の事例や講演会などを聞くことも可能です。

まずフォーラムなどで知識を身につけながら、自分たちのエリアで長く提供できる観光資源を探してみましょう。

また自分たちの地域に合うツーリズムがわかりにくいときは、代表的なものから選ぶのがおすすめです。

代表的なツーリズムについて、詳しくは「代表的なツーリズムの10種類を紹介。注目のニューツーリズムとは」を参考にしてみてください。

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