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メディカルツーリズムとは?日本における現状とインバウンド獲得のポイントを解説

「メディカルツーリズムって何だろう……」

と感じている方。

メディカルツーリズムとは、観光と医療サービスをセットにした海外旅行です。

近年、自国よりも高度で割安な医療サービスを求めて、海外へ渡航する富裕層が増加しています。その中で日本を渡航先として選ぶ人が増えており、ニーズはさらに高まるといわれています。

メディカルツーリズムは治療の前後に観光を楽しむことも多いので、医療を目的としたインバウンド客の増加によって、地域も活性化する可能性があります。

とはいえ、メディカルツーリズムが具体的にどのような効果があるのかは、なかなかわかりにくいですよね。

そこで今回は、

  • メディカルツーリズムとは、観光と医療サービスをセットにした海外旅行
  • メディカルツーリズムはアジア諸国で進んでいる!シンガポール、タイ、韓国の取り組みを紹介
  • 日本におけるメディカルツーリズムの現状や取り組み
  • 日本でメディカルツーリズムを促進させるためのポイント5つ

を順に解説します。

医療と観光をつなげることは難しそうに感じますが、押さえるポイントはそれほど多くありません。

まずはこの記事で、メディカルツーリズムについて大まかに知りましょう!

メディカルツーリズムとは、観光と医療サービスをセットにした海外旅行

メディカルツーリズム(医療ツーリズム)とは、観光と医療サービスをセットにした海外旅行です。旅行者は医療が発展している国に渡航して、検診や治療、手術を受けることが多いです。

メディカルツーリズムで受けられる医療サービスは、例えば以下のようなものです。

【軽度の治療】

  • 歯科治療
  • 美容整形

【高度手術】

  • がん治療
  • 心臓バイパス手術

メディカルツーリズムの特徴は「世界の富裕層を対象に、高度な医療技術やホスピタリティ、豪華な病院施設と最新鋭の医療サービスを提供していること」。

医療の水準は国によって大きく異なり、海外の方が高度な治療を受けられることも少なくありません。そのため富裕層を中心に、より良い医療サービスを求めて海外へ渡航する人が増えています。

メディカルツーリズムが人気の理由と市場規模

メディカルツーリズムが外国人から人気を集める理由は、主に以下の3つです。

  1. 自国にはない高度な医療を受けることができる
  2. 自国と比べて割安で検診や治療を受けることができる
  3. 医療を受けるまでの待機時間を短くできる

これまでメディカルツーリズムの渡航先は、主に英米の医療機関が人気でした。しかし2001年にアメリカで起きたテロによって英米への入国審査が厳格化したことから、最近はアジアの大病院にやってくる中東の富裕層が増えています。

また国によっては、手術を受けるまでに半年以上も待たされることが少なくありません。早期で割安な治療を望む富裕層を中心として、アジアでの医療ツーリズムに注目する人が増えているのです。

実際に医療費用は、アメリカなど一部の国では自国に比べると割安なことが多いです。

アジア諸国における医療費用の安さを、以下の比較表から見てみましょう。

【米国とアジア諸国の医療コスト比較】(米国の医療費用を100としてアジア諸国の医療費用を算出)

米国 日本 韓国 タイ シンガポール
健診・検診 100 85 89 19 47
子宮摘出手術 100 18 60 33 27
心臓バイパス手術 100 22 17 17 9

米国に比べると、アジア圏では2~8割ほどの費用で医療を受けることが可能です。

日本政策投資銀行の調査データによると、2020年の日本におけるメディカルツーリズムの潜在的なニーズは年間で約43万人といわれています。市場規模は約5,500億円、そして約2,800億円の経済効果も見込まれています。

出典:日本政策投資銀行「進む医療の国際化~医療ツーリズムの動向~」
https://www.dbj.jp/ja/topics/report/2010/files/0000004549_file2.pdf

メディカルツーリズムを受ける流れ

実際にメディカルツーリズムを受けるとき、ざっくりですが以下のような流れになります。

  • メディカルツーリズムを取り扱う仲介業者に相談する
  • ビザの申請や申し込みなどに必要な書類を提出する
  • 仲介業者に滞在先なども手配してもらう

ここまでメディカルツーリズムについて解説しました。

先ほど少しお伝えしたように、近年はさまざまな国の富裕層がメディカルツーリズムの渡航先としてアジアを選んでいます。その中でも東南アジアはメディカルツーリズムが盛んであり、多くの外国人観光客を獲得しています。

次で事例を詳しく紹介しますね。

メディカルツーリズムはアジア諸国で進んでいる!シンガポール、タイ、韓国の取り組みを紹介

ここからは、メディカルツーリズムで人気のあるアジア圏の事例として、

  • シンガポール
  • タイ
  • 韓国

の3つを解説しますね。

メディカルツーリズムが進んでいる国1.シンガポール

アジアの中でもいち早くメディカルツーリスト(国際医療患者)を受け入れ始めたのが「シンガポール」です。

シンガポールは1980年代から医療改革を始め、1993年にはアジアの近隣諸国から1万4,000人のメディカルツーリストを国内に誘致した実績があります。

さらに2000年からは国策としてメディカルツーリストの誘致に力を入れ、国内に世界有数のバイオポリス(バイオメディカル研究開発施設)を設立しました。2003年には保健省が中心となって「Singapore Medicineキャンペーン」を打ち出し、中東などの国にも誘致を働きかけています。

結果として、2009年には約66万人のメディカルツーリストを集客することに成功しました。

出典:自治体国際化協会「医療制度と医療ツーリズムに見るシンガポールの戦略」
http://www.clair.or.jp/j/forum/pub/docs/398.pdf

メディカルツーリズムが進んでいる国2.タイ

タイではメディカルツーリズムが観光産業の柱となっており、観光客全体の8%が医療目的で訪れる観光客となっています。

タイは2002年に政府観光庁が「医療ハブ構想」を発表し、ビザ発行手続きの簡素化などに取り組んできました。2003年には「アジアの健康首都」を宣言し、民間病院へのメディカルツーリスト受け入れを推進しています。

さらにタイ厚生省はメディカルツーリズム推進のために、2010~2013年の4年間における全予算の10~15%にあたる50億円を「ヘルスケア・医療プロジェクト」事業費へ充当することを決めました。

実際にバンコクにある「バムルンラード病院」では、多言語に対応できる通訳などを配置しています。

ちなみにタイはシンガポールと異なり、以下の分野の集客に力を入れていました。

  • 健康増進
  • 美容整形
  • 性転換

その結果、中東や欧米圏のインバウンド客を呼び込み続けています。

メディカルツーリズムが進んでいる国3.韓国

韓国は「美容大国」として、漢方を併用した治療法などを前面に押し出しています。実際に美容のために、韓国旅行を計画する日本人も少なくありません。

実は韓国では、医療法によりメディカルツーリストの誘致が禁止されていました。しかし2009年1月に医療法が改正され、外国人患者に限定されたビザ「医療観光ビザ(Medical Visa)」を新設するなど、メディカルツーリストの誘致を可能にしています。

韓国は24時間対応できるコールセンターを新設し、以下の5ヶ国語に対応しています。

  • 英語
  • 日本語
  • 中国語
  • ロシア語
  • アラビア語

結果として、アジアおよび中東の富裕層を獲得することに成功。2007年に7,901人だったメディカルツーリストは、2009年に60,200人まで増加しました。

次は、日本におけるメディカルツーリズムに対する取り組みや現状についてお伝えしますね。

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日本におけるメディカルツーリズムの現状や取り組み

日本では近年、医療を「国家の観光資源」として考え、積極的にメディカルツーリズムを推進しています。

実際の取り組みは2009年頃から本格化し、以下の組織が相次いで立ち上がりました。

  • 厚生労働省「医療ツーリズムプロジェクトチーム」
  • 経済産業省「サービス・ツーリズム(高度健診医療分野)研究会」
  • 観光庁「インバウンド医療観光に関する研究会」

また2011年1月には「医療滞在ビザ」を解禁し、このビザによって訪日外国人に対して以下のことを許可しています。

  • 最長6ヶ月の滞在が可能
  • 3年以内なら何度でも入国可能

外国人が日本へ医療を受けに来るハードルが低くなりました。

その結果、医療滞在ビザの発給数は以下のように変化しています。

【医療滞在ビザ発給数の推移】

医療滞在ビザ発給数(人)
2017年 1,383
2016年 1,307
2015年 946
2014年 611
2013年 299
2012年 188

出典:外務省「平成29年(2017年)ビザ(査証)発給統計」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hakkyu/index.html

医療を目的として日本を訪れる外国人が、年々増加しています。

医療滞在ビザについて詳しくは、「医療滞在ビザとは?外国人の受け入れを増やせば、日本の医療サービスを海外に広めるきっかけにも」をご一読ください。

メディカルツーリズムに注目する理由は「旅行消費額の高さ」

国がメディカルツーリズムに注目する理由は「旅行中の消費額が高くなること」です。

2020年3月に観光庁が調査したデータによると、2019年におけるインバウンド客の旅行消費額は4兆8,135億円でした。旅行消費額をさらに高めるために、メディカルツーリストの誘致が効果的だといわれています。

出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査2019年年間値(確報)~訪日外国人旅行消費額4兆8,135億円~」
http://www.mlit.go.jp/kankocho/topics02_000182.html

その理由は、例えば

  • 医療費用
  • ビザの取得
  • 同伴者の滞在
  • 長期間におよぶ滞在
  • 治療の合間に楽しむ観光やアクティビティ

などです。

また最初にメディカルツーリズムを考えているインバウンド客は、富裕層が多いとお伝えしました。レベルの高い医療技術や充実した病院設備、ホテルのような滞在施設など、富裕層にアピールすれば興味を持たれやすいです。

そして治療の前後などに、日本を観光しようと考えている観光客も少なくありません。

メディカルツーリストの誘致によって医療機関はもちろん、地方自治体にある宿泊施設や小売店、飲食店なども売上アップが期待できます。

日本における医療インバウンドについて、詳しくは「医療インバウンドとは?日本の医療サービスを広め、消費につなげるポイントを解説」をご一読ください。

日本におけるメディカルツーリズムの現状と問題点

ここまでアジア圏におけるメディカルツーリズムの現状をお伝えしましたが、その中で日本はやや遅れているのが現状です。

その理由は、主に以下の3つです。

【1.外国人を受け入れている病院であることを知られていない】
まず外国人患者に対応できることを知られていない病院が多いです。外国人に対応できても、情報発信によって集客できなければメディカルツーリズムの効果は期待できません。

【2.滞在先など医療提供にともなう手配に時間がかかる】
日本での滞在先の確保など、医療サービスを受けるために必要な手配に時間がかかることが多いです。訪日外国人は待ち時間の短縮と高い医療サービスなどを求めていることが多いので、スムーズな対応が必要です。

【3.宗教や言語への対応が遅れている】
先ほどメディカルツーリストは中東の富裕層が中心だとお伝えしましたが、中東圏のインバウンド客はイスラム教を進行する「ムスリム」であることが多いです。ハラルフードの提供やお祈りスペースの確保、アラビア語への対応なども求められています。

このように、日本におけるメディカルツーリズムの対応はまだまだ十分とはいえません。より多くのメディカルツーリストに対応するには、いくつか対策が必要です。

次で詳しく紹介します。

日本でメディカルツーリズムを促進させるためのポイント5つ

メディカルツーリストを獲得するためのポイントとして、

  1. JCI認証を取得する
  2. 海外の医療機関とカルテや情報を共有する
  3. 医療コーディネーターの確保や育成をする
  4. 医療コーディネート企業にサポートを依頼する
  5. 地方自治体と連携しながら滞在先などを確保していく

の5つを解説しますね。

ポイント1. JCI認証を取得すること

1つ目のポイントは「JCI認証を取得する」です。

「JCI(Joint Commission International)認証」とは、アメリカに本拠を置く医療機関の格付け機構のこと。JCI認証を受けている医療機関はホームページなどに名前や住所が掲載されるため、外国人に認知されやすくなります。

実際にJCI認証を参考にする外国人が多いため、メディカルツーリストの獲得においてJCIに認証されることは欠かせません。

審査は、例えば以下のような項目で判断されます。

  • 患者のケア
  • 薬物の管理と使用
  • 感染の予防と管理
  • 組織管理
  • 職員の資格と教育

すべて合わせると14分野1,145の測定項目があり、厳しい審査をクリアした病院のみがJCI認証を付与されます。

ちなみにJCI認定を受けている病院の数が多い上位国は、以下の3つです。

  1. アラブ首長国連邦(UAE):205施設
  2. 中国:110施設
  3. サウジアラビア:105施設

日本で最初にJCI認証を受けたのは千葉県鴨川にある亀田総合病院で、メディカルツーリストからの人気が特に高くなっています。2019年3月現在、日本では28の医療施設がJCI認証を取得していますが、まだまだ十分とはいえません。

自分が勤めている病院もJCI認証を受けられるかどうか、調べてみましょう。

ポイント2. 海外の医療機関とカルテや情報を共有すること

2つ目のポイントは、「海外の医療機関とカルテや情報を共有すること」です。

外国人患者を適切に診断するうえで、以下の情報は欠かせません。

  • 過去のカルテ
  • 医療渡航データ
  • 疾患などの情報

海外の医療機関とうまく連携を取り、あらかじめ情報を共有しておくことが必要です。

実際に経済産業省は2017年に「日中遠隔医療ネットワーク構築および訪日受診促進プロジェクト」を発足し、メディカルツーリズムを推進する社団法人「MEJ(Medical Excellence JAPAN)」とともに問題解決にあたっています。

専門組織の力を借りながら、海外病院と連携を取って患者の状態を把握しましょう。

ポイント3. 医療コーディネーターの確保や育成をすること

3つ目のポイントは、「医療コーディネーターの確保や育成をすること」です。

先ほど「日本の医療機関は多言語や宗教への対応が十分ではない」とお伝えしました。その他にも経済産業省のアンケート調査によると、医療機関は以下の点で外国人患者の受け入れに課題を感じています。

【外国人患者の受け入れで課題と感じている点】

  1. 国内の患者対応により人手が不足:23.8%
  2. 多言語・異文化への対応:19.8%
  3. 外国語を話すことができる医師、看護師が不足:19.4%

出典:経済産業省「外国人患者の医療渡航促進に向けた現状の取組と課題について」
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/iryou_coordinate/pdf/001_04_00.pdf

多くの医療機関が外国語や異文化に対応できる人材不足を挙げているため、医療コーディネーターの確保や育成は欠かせません。

医療コーディネーターに必要な役割は、例えば以下のようなものです。

  • 医療通訳
  • 空港エスコート
  • カウンセリング

医療コーディネーターを配置することで、病院側はもちろん患者側も安心して医療を受けられるようになります。

特にメディカルツーリズムの利用が多い中東のインバウンド客への対応は、「中東最大のゲームショー「MIDDLE EAST GAMES CON(ミドルイースト・ゲームコン)」から学ぶインバウンド対策とは」をご一読ください。

ポイント4.医療コーディネート企業にサポートを依頼する

4つ目のポイントは「医療コーディネート企業にサポートを依頼する」です。

先ほど医療コーディネーターの育成や確保が急速に必要だとお伝えしましたが、すぐに人材を確保することはなかなかできません。その場合、医療コーディネート事業に取り組んでいる企業にサポートを依頼しましょう。

コーディネート企業は訪日外国人の身元確認などはもちろん、トラブル時のスムーズなやり取りも心得ています。初めて外国人患者の受け入れに取り組む医療機関などは、サポートを依頼しておくだけでも安心できます。

実際に旅行会社のJTBなど、「ヘルスケアコンサルティング」に取り組む企業が増えています。

初めて取り組む場合は、サポートを依頼することも検討してみてください。

ポイント5.地方自治体と連携しながら滞在先などを確保していく

5つ目のポイントは「地方自治体と連携しながら滞在先などを確保していく」です。

先ほど、滞在先の確保などに手間がかかっていることも日本の課題点だとお伝えしました。ホテルなど外国人の宿泊先は、地方自治体と連携して情報共有することで解決できることも多いです。

地方自治体の担当者と外国人患者を受け入れられるホテル、外国語に対応できる飲食店や小売店などを共有することで、インバウンド客の利用が増えることも少なくありません。結果として、地域活性化なども期待できます。

「一般社団法人メディカルツーリズム協会」でも受け入れ医療機関などは確認できるので、地域の病院があるかどうか参照にしてみてください。

メディカルツーリズムを活用することで、医療機関のある地域全体が活性化する

今回は、メディカルツーリズムについて解説しました。

おさらいすると、メディカルツーリズム(医療ツーリズム)とは観光と医療サービスをセットにした海外旅行です。

メディカルツーリズムが人気の理由は、主に以下の3つです。

  1. 自国には無い高度な医療を受けることができる
  2. 自国と比べて割安で検診や治療を受けることができる
  3. 医療を受けるまでの待機時間を短くできる

日本は諸外国と比べて高い水準の医療技術を持っており、その医療を求めて渡航するインバウンド客が少なくありません。

日本がこれからメディカルツーリストを獲得するためのポイントとして、以下の5つをお伝えしました。

  1. JCI認証を取得する
  2. 海外の医療機関とカルテや情報を共有する
  3. 医療コーディネーターの確保や育成をする
  4. 医療コーディネート企業にサポートを依頼する
  5. 地方自治体と連携しながら滞在先などを確保していく

安心して医療サービスを受けてもらえる環境が整うことで、地域の活性化も期待できます。

またメディカルツーリズムのような観光の仕方は、他にもさまざまなタイプがあります。地域に合ったツーリズムを知って取り組むことで、インバウンド客が増える可能性はさらに高まります。

詳しくは「代表的なツーリズムの10種類を紹介。注目のニューツーリズムとは」をご一読ください。

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