泊食分離(はくしょくぶんり)で旅館の稼働率をアップ。飲食店の活性化にもつなげた星野リゾートの事例を紹介します

2017年8月、観光庁が「泊食分離(はくしょくぶんり)」を推進すると発表しました。これは、今まで旅館が提供していた1泊2食付きのプランをやめて、素泊まりのみを提供すること。宿泊と食事を別の場所に用意することで、旅館にインバウンド客が増えると予想しています。

泊食分離は、3つのメリットがあります。

  1. 旅館の稼働率が上がる
  2. 人手不足が解消する
  3. 街がにぎやかになる

しかし、これまで素泊まりは、ビジネスホテルが提供してきた宿泊スタイル。メリットがあっても、旅館で食事をしないというのは、なかなかイメージが湧きにくいものです。

そこで今回は、泊食分離についてと導入の背景を、まず解説します。そして、泊食分離をコンセプトとした「星のや」2店舗を運営する星野リゾートをご紹介します。星のやは京都の店舗でレストランと連携し、飲食店の活性化にもつなげているのです。

まずはこの記事で、泊食分離について大まかに理解しましょう。

泊食分離とは1泊2食のプランをやめて、素泊まりを提供すること

泊食分離とは、旅館が宿泊場所のみを提供することです。「はくしょくぶんり」と読み、宿泊客は「宿泊」と「食事」を、それぞれ別の場所で行います。

今まで旅館は、1泊2食を用意する宿泊プランが当たり前でした。しかし、泊食分離ではこの2食の提供をやめて、部屋のみを用意します。

旅館によっては、

  • 素泊まり
  • 朝食のみ
  • 朝・夕の2食付き

という選択肢から、宿泊客が選ぶこともできるようです。

観光庁が2017年8月に泊食分離を推進すると発表

観光庁は2017年8月より、この泊食分離の導入を積極的に行うと発表しています。

観光庁の目標は、2020年までに約4,000万人の訪日外国人を呼び込むこと。この目標に向けた戦略の1つが泊食分離です。

しかし、泊食分離がどのようにして訪日外国人を増やすのか、つながりが見えにくいのではないでしょうか。実は、宿泊と食事を別々の場所で提供することが、訪日外国人の満足度上昇につながるのです。

次から、その理由を解説します。

泊食分離は訪日外国人のニーズを満たして、旅館の稼働率を上げる

泊食分離は、訪日外国人のニーズを満たすと予想されています。そして、外国人の宿泊が増えることで、旅館の稼働率もアップするのです。

泊食分離を導入する理由は、旅館の稼働率の低さにある

観光庁が調べた宿泊施設の稼働率(平成29年5月)では、宿泊施設の中で「旅館は特に稼働率が低くなっている」という結果が出ています。

  • 【ビジネスホテル】74.6%
  • 【リゾートホテル】55.5%
  • 【旅館】39.4%

【出典】観光庁「宿泊旅行統計調査(平成29年4月・第2次速報、5月・第1次速報)」

多くの施設が稼働率50%を超える中、旅館は39.4%とかなり低い状態。

原因に、インバウンド客の増加があるのではないか、と観光庁は考えています。なぜなら、インバウンド客のニーズは旅館のサービスとマッチしにくいからです。

旅館の1泊2食付きプラン、インバウンド客は必要としていない

先ほどの資料によると、インバウンド客の宿泊は、3大都市圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫の8都道府県)で15.2%、他の地方部で17.2%と、増加傾向にあります。

そして、71.2%の外国人が「日本食を食べること」を楽しみに来日しています。

【出典】観光庁「訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析 平成28年 年次報告書」

しかし、旅館の食事ではあらかじめメニューが決まっています。そのため、場所やメニューを自由に選びたい訪日外国人は、旅館の食事に魅力を感じません。例えば「日本のラーメンが食べてみたい!」と思って来た訪日客は、いくら旅館の食事がおいしくても本当に満足できるとは限りません。

また、訪日外国人は連泊する傾向が強く、平均的な宿泊日数は4〜6泊です。

【出典】観光庁「訪日外国人消費動向調査 平成29年年間値の推計」

旅館の食事は、連泊でもメニューに大きな変更はありません。訪日外国人は、「連泊すると食事が似ていて飽きる」と感じているのです。

このようなインバウンド客の傾向から、観光庁は泊食分離を取り入れることを決意。食事を自由にできるようになれば、インバウンド客が旅館にも宿泊すると予想しています。

泊食分離は、もちろん旅館にもメリットがあります。次で、どのような良い影響があるのかを詳しくお伝えします。

旅館が泊食分離を行う3つのメリットとは?

旅館が泊食分離を取り入れると、

  1. 稼働率が上がる
  2. 人手不足の解消
  3. 街や飲食店が活性化する

という3つのメリットがあります。ここから、1つずつご説明します。

1.旅館の宿泊客が増えて、稼働率が上がる

まず、泊食分離を行うことで、インバウンド客の宿泊が増加。旅館の稼働率が上がります。

訪日外国人の多くは、実は旅館に高い興味を持っています。旅館は「温泉、畳、浴衣」といった日本文化を、一度に体験できる場所。「泊まりたい」と感じるものの、食事が選べないことで予約をためらいがちになっているのです。

そこで、泊食分離でインバウンド客を呼び込む旅館が増えています。実際に、泊食分離を実施した旅館の17.4%が、「外国人のお客さまが増えた」と実感。

このように、インバウンド客の予約が増えれば、稼働率がアップする可能性があるのです。

2.食事を用意する手間がなくなり、人手不足が解消される

泊食分離には、人手不足が解消されるというメリットもあります。食事を用意する手間がなくなり、少ないスタッフでもスムーズに旅館を運営できるのです。

旅館業は、料理人や仲居が集まりにくくなっています。理由は、給与水準の低さ。稼働率が上がらないと、給与を上げることもできず、なかなか状態を変えることができません。

しかし、泊食分離を行えば、そもそも料理人や仲居に頼りすぎる必要がなくなります。そうすれば、スタッフを掃除やフロントにしぼることが可能に。スタッフを増やすことなく、旅館が運営できるのです。

実際に、15.2%の旅館が泊食分離の導入で、人手不足を解消しています。

3.街がにぎやかになり、飲食店の売上もアップ

泊食分離をすれば、宿泊客が旅館の近くにある飲食店へ出かけます。街を歩く人が増え、地域がにぎやかに。実際に、32.6%の施設が「地域が活性化した」と感じています。

【出典】観光庁「宿泊施設の地域連携に関する調査」結果

また、訪日外国人は気に入ったお店ができれば何度も訪れる可能性も。来店が続けば、売上もアップするはずです。

このように、泊食分離でインバウンド客が増えれば、街に活気が生まれ、良い影響を与えるのです。

実際に、星野リゾートの旅館「星のや」は、泊食分離をコンセプトとして営業しています。特に、星のや京都は、近くの飲食店と連携したことで、80%を超える稼働率を記録しています。

事例については以下で詳しく解説します。

星野リゾートの事例と泊食分離を導入するために必要なこと

星野リゾートが運営する「星のや」は、泊食分離をコンセプトとする旅館の1つです。そして、京都の店舗では近くの飲食店と協力することで、宿泊客の「さまざまな料理を、自分の好きな時間に楽しみたい」というニーズを叶えています。

まず、星のやがどのような形で泊食分離を取り入れることになったのか、ご紹介します。

事例:「星のや京都」宿泊客に近くの飲食店を紹介し、食後のサービスも用意

星野リゾートの「星のや」は、宿泊料金のみのプランと食事付きのプランを用意。宿泊客が予約するときに、選べるようにしています。

泊食分離を取り入れた理由は、宿泊客のニーズにあります。星のやはオープン前に市場調査を行ったところ、多くのお客様が「温泉は好きだけれど、旅館は嫌い」と感じていることが発覚。メニューや時間の決まった食事の提供が、宿泊客を拘束し、「施設側の都合を押し付けたサービスになっている」と分析したのです。

【出典】星野リゾート「星野リゾートの道のり 2005」

そこで、泊食分離と24時間のルームサービスを導入。今後、国内だけでなく海外で通用するコンセプトとなることも予想して、宿泊客が食事を自由に決めるシステムに変えたのです。

食事の選択肢は、以下の3つです。

  1. 旅館内のダイニング
  2. 24時間のルームサービス
  3. 周辺の飲食店

星のやでは「京都吉兆 嵐山本店」と「老香港酒家京都」と連携し、宿泊客をご案内。レストランによっては、星のやの宿泊客にのみ、食後のティーセレモニーをサービスします。

泊食分離を行った星のやは、企業内で最も稼働率が高くなった

星のや京都は、星野リゾートが運営する施設の中で、最も高い稼働率を記録しています。

例えば、星野リゾートが展開する旅館「界」と比べてみましょう。平成28年5月から平成29年4月まで、1年間の累計稼働率は、以下の通りです。

  • 【界】75.2%
  • 【星のや 京都】86.6%

星のやが、界よりも約10%も高い稼働率を記録しています。また、星のや京都は2017年11月に、98.1%という数字も記録。泊食分離が良い影響を与えていると考えられます。

【出典】星野リゾート「平成29年4月期(第8期)決算説明会資料」

ただし、この結果は周辺レストランの協力があってこそ。泊食分離のためには、飲食店との連携が欠かせません。

泊食分離を行うためには周辺レストランの協力が必要

レストランの数が少ないと宿泊客は食事が難しく、結果として泊食分離は実現しません。星のやのように、宿泊客を紹介する代わりにサービスをしてもらうなど、協力が必要です。

サービス内容も一緒に考えれば、宿泊客は食事の選択肢として、近くのレストランを取り入れます。きっかけがあれば、宿泊客はレストランでの食事を選択するはず。来店が増えることで、レストランの売上アップも期待できます。

このように、泊食分離は周辺のレストランにも良い影響を与えるのです。

泊食分離が旅館の新たな集客となり、飲食店の売上アップにもつながる

おさらいすると、泊食分離(はくしょくぶんり)は、観光庁がインバウンド客を呼び込むために、2017年から推進する方針の1つです。

意味は、宿泊客に「宿泊」と「食事」を別々の場所で行ってもらうこと。旅館は、1泊2食付きのプランをやめて、素泊まりのみを用意します。

泊食分離を行うと、3つのメリットがあります。

  1. 旅館の稼働率が上がる
  2. 料理人や仲居の人手不足が解消する
  3. 街がにぎやかになり、飲食店の売上もアップ

泊食分離をすれば、「さまざまな場所で、好きなタイミングに食事をしたい」というインバウンド客のニーズを満たし、予約も増えると予想しています。

飲食店と連携した事例として、星野リゾートの「星のや 京都」をご紹介しました。ここは、泊食分離をコンセプトとする旅館の1つ。レストランとの連携で食事の場所を3つ用意した結果、星のや京都は最高で98.1%の稼働率を記録しています。

星野リゾートのように、飲食店との連携をしながら泊食分離を実施すれば、インバウンド客が増加。旅館や飲食店の売上アップが期待できるはずです。

また訪日客を集めるにはリノベーションも効果があります。詳しくは「リノベーションがホテル予約の理由に。訪日客の集客に成功した、京都の事例を紹介します」をご一読ください。

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